蝋人形城殺人事件11
暖炉のある部屋に戻ると、金田一とともに蝋人形に近づく。アキが「そう言えば、気になっていたんですが」と蝋人形に近づいた。
「どうして、蝋人形に杭はささってないのかな」
そう言えば、金田一が「どういうことだ? アキ」と首を傾げる。アキが杭を持ち上げてみれば、杭はすんなりと上がる。ね、と首を傾げたアキに、金田一は「本当だ」と人形を見た。
「刺さりにくいとかじゃないのか?」
「それはなさそうだぜ。発泡スチロールで出来てる」
「犯人はわざと刺さなかった」
「ああ、その線が強い。他に何か気づいたことがあるか、アキ?」
そう首を傾げた金田一に、アキは「そうだなぁ」と砕けた口調で口を開いた。
「蝋人形の作りの粗さ、と、マント、かな」
「? それは、どういう意味? アキちゃん」
「玄関にあった蝋人形は作りこまれていたけど、参加者の蝋人形は作りが荒い」
「時間がなかったからじゃないのかしら?」
「かもしれないし、ちがうかもしれない。でも、印象の操作はできる」
「印象の操作――」
「そう。マジックの心理トリックに近い。人形の作りの粗さも、この蝋人形が着ているマントも――何か理由があるように感じるんです」
そう言って考え込んだアキに、「Mr,レッドラムに聞いてみるのが一番だと思いますけどね!」とコロンボさんが現れた。曰く、今回のことで犯人候補が三人に絞れたのだとか。南山さんが地図を持ってきて、コロンボさんがペンで指さす。
「東の塔から西の塔へ行く時は、どうしてもこの小暖炉の間を通らなければならないんですよ」
たしかに、そうである。俺達の塔から、東の塔へは小暖炉の間を通るしか方法はない。しかし、その時は鍵がかかっていた。そう、西の塔から小暖炉の間までは巨大な密室になっていたことになる。普通に考えれば、犯人はその密室内にいた人間、すなわち、坂東さん、マリアさん、真木目さんの誰かになる。でも、それじゃあ逆に違和感がありすぎる。
「それじゃあ、まるっきり、三文ミステリー小説よ。犯人は中から鍵をかけ、自ら閉じこもった――これじゃあ、『私が犯人です』っていってるようなものじゃない! 犯人は三人に罪を着せようと、何らかのトリックで密室を作り上げた。本格ミステリーならそこまでいかないとね」
その言葉に、アキはチラリと多岐川さんを見た。なんだ? と俺もアキさんを見るが、おかしいことはない。その後は、金田一が「秘密の隠し通路だ!」と声を上げる。まぁ、これは隠し通路まで一緒に移築しているわけないよな、と言う話で終わってしまったが。
その後は事件が起こることもなく、平和だった。