The third conjurer01


 たどり着いたのは大きなお屋敷だ。流石有名な奇術団――いや、有名な奇術師の家だといえる。真田さんが先に中に入り、少し目を見開いてテクテクと歩いて行く。彼の背を追うように歩けば、真田さんの先にはよく知る三人組がいた。まさか、と半笑いしたヤマトに、偶然ですねぇ、と笑う。

「あれ? ヤマトくんとアキちゃん?」
「こんばんは、蘭ちゃん、毛利探偵、コナン君」
「どうしてアキさんとヤマトがここに?」

 その問いに苦笑いしてから真田さんを見る。近くにいた他の三人も私達を見た。

「えっと――」
「あら、もしかして、その子が?」

 そう告げた髪の長い女性――彼女は確か日本有数の女性マジシャン、三好麻子さんだろう――に、真田さんは「ああ」と頷いた。

「勧誘できたのね?」
「いや、とりあえず見学に連れて来ただけだ」

 真田さんの言葉に、髪の短い女性――この奇術団の一員である九十九七恵さんは「あら、」と声を上げて私を見た。

「でも、来てくれたのね。貴女の話は真田くんや噂で聞いてるわ」

 噂? と首を傾げてみる。近くにいた三好さんともう一人の男性が「へぇ、」と呟いて私を見た。噂の内容は教えてくれないらしい。居心地があまり良くないそれに、苦笑いをすれば、ヤマトがコナンくん達に口を開いた。

「なんかアキがスカウトされてるっぽい。だから、今日はとりあえず見学」
「アキちゃん、すっごーい!」

 そう声を上げた蘭ちゃんに、ありがとう、と言っておく。関心したような毛利探偵とコナンくんに曖昧に笑った。

「こっちの坊やは?」
「私の弟です、両親は海外で家にいないので……真田さんが誘ってくださいました」

 三好さんの問いに、そう困ったように笑う。実際は真田さんがヤマトを人質にしたようなものだが、まぁそれは関係がないだろう。

「三人はどうしてこちらに?」
「貴方は先生を知ってるかしら?」
「ええ、存じ上げております。最近――」

 そこで言葉をとめる。ニュースや雑誌では自殺みたいなことが書かれていたが、師を亡くした方の前でそういうのは不謹慎だ。

「亡くなられたのはニュースで知りました。何度か弟とショーに行っていたのですが」

 そう眉尻を下げて言う。しかし、三好さんがあっさりと「自殺だったんだけどね」と笑った。

「自殺する人じゃなかったから。それにカードのことも気になるし」
「カード?」

 そう声を上げたヤマトは首をかしげる。同じく男性も首を傾げた。

「これよ、これ!」

 そう九十九さんが取り出したのは不思議なカードだ。背中合わせにAとJが張り付いている。主人の倒れていた地下室の机の上にあった、ということは何かのメッセージである可能性があるんだろう。

「なるほど、再調査ですか?」
「そういうこと!」

 そう告げたコナン君に笑う。コナン君は本当にはじめちゃんみたいだ。おそらく、将来はそうなるのだろう。
 ……はじめちゃんより真面目だろうけれど。
 不意にちらりと真田さんを見る。眉間にしわを寄せた彼は男性からトランプをとるとそれを破った。焦る毛利探偵とコナン君をよそに、彼は口を開く。

「今更この家を引っ掻き回しても何もありはしない。残ったのは二人の天才が一人になってしまったという、この事実だけだ」

 そう言って真田さんはトランプの切れ端を宙に投げた。切れ端はトランプとなって上から落ちてくる。おお! と歓声をあげたヤマトをよそに、私はなんとも言えなくなった。降ってきたトランプの柄がマチマチである。恐らく彼は動揺したままなのだろう。
 大事な遺留品を! と掴みかかった毛利探偵に真田さんは冷静に「大丈夫ですよ、本物は貴方の上着のポケットの中だ」と声をかけた。
「まぁ、早く引き上げた方が賢明ですよ、名探偵の名に傷をつけないためにもね。アキ、ヤマト、こっちから案内するよ」

 そう彼は私とヤマトに声をかける。一応ヤマトを見たが、ヤマトは真田さんについて行ったため恐らく興味が事件よりも奇術団の屋敷のほうが強いのだろう。
 私もとりあえずそこにいた方々に一礼をして真田さんに追いついた。