The third conjurer03


 さとみさん曰く、九十九元康の自殺を機に塞ぎこんでしまった真田さんが、ある日、機嫌よく帰ってきたらしい。それから度々出掛けては機嫌よく帰ってくるようになったため、不思議に思ったさとみさんが真田さんの後をつけて行ったら、アキがマジックをしていた、らしい。

「飯塚さんに会うので気が紛れてたみたい」
「なるほど」
「……そういえば、あの事件から飯塚さんはなんともない?」

 そう首を傾げたさとみさんに「どういう意味?」と首を傾げてみる。

「んー……なんていうか、気のせいならいいんだけど、高遠さんが飯塚さんを気にかけてたみたいに見えたから」
 高遠さん脱獄しちゃった、って聞いたし。

 そう呟いたさとみさんに目を見開く。さとみさんは前を向いていて俺の表情に気づいていない。

「昔ね、何時だったかな、高遠さんも私も入りたての時に、高遠さんが携帯を忘れたから届けたことがあったの」
「うん」
「待ち受けがうたた寝してる女の子だったんだ。今思えば彼女、あの子に飯塚さんがそっくりだったなって」

 おい高遠何してるんだ。確かに今のホーム画面も確かこの前のパーティーのアキだった気がする。ロック画面はバラか何かだったが。

「あと、ロビーから彼女を連れ出してる時、雰囲気がちょっと違ったから……って思ったんだけど、あたしの考えすぎよね」

 そうあっけらかんと笑ったさとみさんに、女の勘は侮れねぇと苦笑いする。当たってるが言わないほうがいいだろう。言わぬが仏、とういうかなんというか。
 さとみさんは階段で地下を降り切ると扉を開けた。

「で、話は変わって、ここが師匠だった九十九元康先生の部屋だよ……ってあれ?」

 さとみさんが開けた先には毛利探偵達がいる。目があったコナンは電話の側に座っていた。
「あら、さとみさん」
「すいません、お取り組み中でした?」
「彼女は?」
「彼女は残間さとみさん。主人の弟子の一人です。さとみさん、こちらは毛利探偵よ」
「あ、あの有名な!」

 ポンッと手を叩いたさとみさん達は会話に入り、コナンは俺を手招く。ため息をついてから近づけば数字の羅列を見せられた。

「ヤマト、これ、何だと思う?」

 その言葉にもう一度数字を見る。
 126871*32489*13648*1397。
 パソコンなんかでは「*」は掛け算のマークとして使われるが、おそらくは違うんだろう。暗号的な何かだ。かといって、法則があるわけでもない。ならば、何かがあって成り立つモノなんだろう。

 例えば――。

 そう視線をコナンの横にずらす。そこにあった固定電話を見てもう一度数字の羅列を見る。

「電話の数字の羅列か?」
「は?」
「成り立つ数式じゃないし、法則があるわけじゃないだろ? だから、何かがないと無理ってなるとお前が電話の近くに座ってるし電話かなって思ったんだけど」

 そう告げればコナンはハッとしたようにメモに何書こうとして――シャーペンの芯がなくなったらしい。おいおい、聞くだけ聞いて置いてけぼりかよ、と苦笑いする。さとみさんがやってきて、俺とコナンを見て「探偵ごっこの友達?」と首を傾げた。

「この前も金田一くんと一緒だったもんね!」
「あははは……」
「お姉さん、ヤマトと知り合いなの?」
「前にちょっとね」

 そう笑ったさとみさんに、コナンはフゥンと言って俺を見る。とりあえず頷いておいた。多分あとで聞かれるのだろう。

「なぁ、ヤマト、ペン持ってねぇか?」
「持ってない。今日ここに来たこと自体偶々だからな」
「ねぇ、ペンか何か持ってなぁい?」

 そう尋ねたコナンに、九十九さんが万年筆を探すが無く。同じくカラーペンもなく。途中から来たから全くわからないが、おかしいような気もする。

「そんな数字いつまでみてんだ? 警察の言う通り、それは娘さんのイタズラだよ…」

 そう言った毛利探偵にコナンに寄ってみる。

「どうなってるんだよ?」
「自殺に見せかけた毒殺だよ。全員外出中に毒殺、多分、手を縛った状態だった」
「手?」
「親指を固定されてた」
「なるほどな……」

 コナンの言葉に少し考えて、できるだけコナンの真似をして口を開く。子供になれ、俺。

「でも、なんでこの人電話しなかったんだ?」
「え?」
「だってさー、だってさー、誰かに殺されたかもってことで毛利探偵来てるんだろ? 親指固定されてても、電話はかけれそうじゃんか! 数字押せば音階なるし! 警察とか呼びやすそうじゃん!」

 そう声を上げてみる。恥ずかしい。かなり恥ずかしい。

「それに、ほら、よく、推理小説なんかじゃダイングメッセージとか言って手がかり残すじゃん! あーでも、ペンないのかー……電話?」

 首を傾げて尋ねればコナンが「電話線抜けてたわけじゃないもんねー」と同調する。毛利探偵はそれに何か気づいたようだ。