狙撃手の名は蠍


 通天閣で快斗くんと別れて、景色を眺めていたら高遠さんが現れた。どうやらお仕事の話は終わったらしい。最近塾の講師をしている彼だから、恐らくはそっち側の電話かもしれない。

「浮気のデートはどうでしたか?」
「そういうのじゃないですよ」

 眉尻を下げれば高遠さんはまた「冗談ですよ」と笑う。外は徐々に暗くなり始めていた。

「彼はどうでしたか?」
「当たり前ですが、推測は否定されました」

 そう言って高遠さんを見上げる。彼は「そうでしょうね」と言った。

「というか、面と向かって言ったんですか」
「はい」
「貴方はまた無茶を」

 これが強盗ならどうなっていたか、と少し怒った高遠さんに怪盗キッドだからと油断していたが、そう言えばそうである。相手が高遠さんや怪盗キッドでなければ殺されていてもおかしくはない。……気をつけよう。

「謎は解けました?」
「すこしは。ヒントはくれましたよ」
「ヒント?」
「通天閣は天気予報が珍しいらしいです」

 ――そういや、通天閣って天気予報が珍しいらしいぜ。

 快斗くんが帰り際にそういったことだ。でも、よくわからないそれである。天気予報がよく外れるとか? とおもっていれば、高遠さんは少し考えてパンフレットをどこからともなく取り出した。

「これですね」

 そこには通天閣のライトアップについて書かれている。

「通天閣は珍しい光の天気予報を行うようですよ」
「光の天気予報?」
「ネオンで天気予報をするようですね」
「なら、光の楼閣は」
「ここ、で間違いなさそうだ」

 高遠さんは少し目を細めて、時計を見る。そして、「アキ、行きましょうか」といって手を引いた。

「行くって何処に?」
「今日の風の方向から考えて、キッドの逃走経路を考えてみたんですよ」
「美術館からのですか?」
「今回の警察の動きからして馬鹿正直に美術館に置くようではありませんでしたよ。レプリカのような箱を持っていましたから」

 そう肩を竦めた高遠さんは「まあ、何処であれ風向きから考えて海の方向へ行くのは確かでしょうから」という。ならば、問題は。

「でも、問題は時間ですね。L、夜中の三時というのも簡単ですし」
「ふふふ、」

 私のつぶやきに、高遠さんは笑う。

「さて、アキ、クルーズディナーと洒落込みましょうか」

 その言葉は、答えになってない。少しむくれてしまったのは仕方ないと思う。高遠さんはソレさえも面白そうにするのだけども。