狙撃手の名は蠍
平次さんとコナンとああでもないこうでもないと言っていれば、もう日が暮れた件。アキからは遠山さんとご飯を食べてから合流します、夜中の12時にはそちらに向かいます、という旨のメッセージがおくられてきた。あと、水族館――海遊館の写真もだ。二匹のジンベイザメの写真や、ペンギンやアシカの写真がおくられてきている。デートかいな、のんきやなぁと言った平次さんに俺は「ついていけばよかった」とぼやく。
「なんや? お姉ちゃんとられるからか? 意外やな。まあ、あんなべっぴんな姉ちゃんやとしゃあないか」
「いや、ヤマトの場合、ジンベイザメ見たかった、とか、そっちだと思うぜ」
そう呆れたように告げたコナンにジト目で「悪かったな」と言う。
「ジンベイザメがみれんの、日本では5ヶ所だけなんだよ。一番近場の神奈川のジンベエザメいなくなったし」
「はいはい、おめーの動物好きは変わらねえな」
「……なんやそうしとると普通の小学生やな」
平次さんの言葉に、コナンがピクリと反応する。俺は「こう見えても小学生なもんで」と答えながら、美術館へと足を踏み入れる。西田さんが女性と話しているのが見えた。どうやら女性はメモリーズ・エッグの話を会長としたいらしい。それを横目で見ていた平次さんが時計を見て何かに気づいたらしい。
「ん? こりゃおもろいな。夜中の三時がLやったら今は『へ』やで」
「へ?」
俺達の返答に平次さんが時計の文字盤をこちらに見せる。
「今は7時13分。これが7時20分になったら完璧な『へ』や」
その言葉に、動きを止める。
黄昏の獅子から暁の乙女へ。言葉に出すと、違うが、文字数で行くと12文字目は『へ』である。と、いうことは。
「――キッドの予告は7時20分?」
「なんやて?」
「『黄昏の獅子から暁の乙女へ』の12文字目は『ヘ』」
「服部、ヤマトの言うとおりだ! 午前三時じゃない! キッドの予告は午後7時20分だ!」
そういってコナンはリュックを美術館のエントランスに投げ込むとボードをひっつかんで走り出す。くっそ、やっぱ、あのボードは羨ましいな!
「おい、コナン!」
「何処行くんや! 工藤!」
「大阪城だ! お前らはエッグを見張ってろ!」
「……ったく、」
「ん? 雨か? 天気予報は確か晴れ――は!」
目を見開いた平次さんに首を傾げる。
「まて! 工藤! 天の楼閣は、天守閣やない! 通天閣や!」
「通天閣?」
「通天閣のテッペンはなあ、珍しい光の天気予報なんや!」
「なに!?」
そう叫んだコナンに通天閣への行き方を考える。その直後、上がった花火に、これはヤバイと思う。通天閣の方向から花火が上がっていないのは、目をくらませるためだろう。でも、たしか、花火だけで終わらなかった気が。
「西野さん、エッグは何処に?」
そう西野さんに尋ねてみる。
「それが、中森警部がどこかにもっていってしまって……」
彼の返答に平次さんが驚いた。これでは守るものも守れないからだ。
――キッドはこの時どう動いた?
そう随分とホコリを被ってしまった、色あせてしまった記憶を辿る。こんな華やかなビル街で、どうやってキッドは得物を見つけたか。
一斉に消えた電気に、はっとする。停電――といえば、自家発電、である。
「停電?」
「コナン! キッドはエッグがある場所をあぶり出す気だ!」
「どういうことだ?」
「停電が起これば病院やホテル、緊急施設は電気がつくのは当たり前だ! ソレ以外は通常、原因が復旧するまで電気はつかない! 普通のビルに今電気がついてみろ! そこに『なにかある』のは当たり前だ!」
その言葉に、ハッしてコナンはボードに乗ると走り出す。平次さんはソレを見てコッチを見た。
「ヤマト、俺らも行こか!」
そうバイクに走り寄った平次さんはヘルメットを俺に投げる。俺がソレを装着すると平次さんはバイクの後ろに俺を乗せた。アクセルを吹かすと、バイクは美術館の敷地を抜ける。西田さんが何か驚いたようにしていたが、まぁ、いきなり飛び出したのだから仕方がないだろう。