狙撃手の名は蠍


 信号も停電の影響で消えてしまい、車が渋滞している。というか、大阪の市内全てが停電しているのだ。恐らく、パニックものである。アッチからコッチから罵声が聞こえる中、バイクはその間をスイスイと通り抜ける。その間、俺はどうしてキッドが停電を起こしたのかということも答えていく。

「なるほど、そういうことか! 自家発電でついたネオンやビルの光をを見るためやったら、通天閣は絶好の位置取りや!」
「やっぱそうなのか……コナン拾っていったほうがはやいか?」
「バイクは二人乗りやけど、そうやな、工藤が入っていったのは行き止まりのはずやし……しゃあないから拾ったるか」

 そう言った平次さんに、携帯が何かの通知を知らせるように音を立てる。ちらりと携帯を見ればアキからの連絡で海に来るように書かれていた。海?と考える。こんな事態の中、何もない連絡を送るアキではないし、恐らくは何かがあるのだろう。――怪盗キッドが最終そっちに向かう、とか。そう考えてたら、バイクが停止する。

「工藤! こっちや!」
「平次さん、俺なんかアキに来るように言われたからそっちいってみる!」
「はあ!?」
「コナン、交代!」

 ヘルメットを脱いで、コナンに投げる。コナンはヘルメットをキャッチし、今度は俺がコナンからボードを受け取る。

「アキが海に来い、って言ってるからそっちにいく! 多分、逃走経路か何かだと思う!」
「そうか、風向きは――わかった!」
「……平次さん、海はどっちだ?」
「海浜公園ならこのまま道沿いに行けばある」
「さんきゅ! 平次さん、キッドの進行方向の確認はコナンに任せて前見ろよ!」

 実は、コナンの七不思議道具は何度か借りたことがある。いや、さすがにあの靴や麻酔銃はないが。メガネはとあるキャンプで事件に巻き込まれた際、留守番をしていた灰原に使い方をおそわり、このボードに至ってはコナン風に言えば、米花公園でコナンに教わった。少年探偵団の集合の前に本屋によっていたら早く付きすぎて暇を持て余した結果、だが。
 コナンが平次さんにアキ云々の説明をしながらバイクを発進させる。それを見送り、ボードにのった。アクセル代わりになる場所を踏めば、それは加速する。道沿いに行けばある、とのことなので、渋滞する道をそのままスイスイと進む。オレも気をつけていかないと、事故る。つーか、平次さん事故を起こす記憶あるからああ言ったけど大丈夫か。事故ってほしくない。バイクの事故結構エグいしな。

 そのままスピードを上げて海浜公園へ向かう。風は少し向かい風だ。恐らく、アキがオレを呼んだのは逃走ルートを把握しているからだからだろう。というか、時間からしてアキと高遠は時間も出没場所もわかっていたらしい。全く頭が上がらない姉である。高遠に関心はしたくないが、まぁ、博識だしああいう暗号は得意そうだ。
 公園に近づくと、奥の方から白い三角形が見え始めた。おそらくは、キッドだろう。それに感心していれば、影になっているが歩道橋のような場所から誰かがキッドに何かを向けるのをが見える。

「は、?」

 長いソレは恐らく棒なんていう可愛らしいものではない。恐らくは――。それが何か認識して、目を見開く。

「避けろ! キッド!」

 そう叫んでも意味が無いとはわかっている。キッドが失速するように海に向かうのと、白い何かが硬化するのが見えた。そのままボードでそちらへ向かえば、コナンと平次さんがバイクでやってきた。二人が揃っているのを見ると事故は起こしてないらしい。落ちているものに先に近づく。

「――やばい」
「ヤマト?」

 そう後ろから駆け寄ってきた二人を振り返る。なんや、エッグ落ちてるやんけ、といった平次さんと無事かと安堵したコナンに口を開く。

「怪盗キッドが、撃たれたかも、しれない」

 怪我をした鳩を抱える。落ちている割れてしまったモノクルを見て、コナンが目を見開いた。

「まさか、撃たれて海に、」
「じゃあ、さっきの男は――」

 そう呟いた平次さんに、コナンは目を細めた。