魔術列車殺人事件02
俺は今、剣持警部におんぶされて駅の中を爆走中だ。後ろには、佐木、美雪さん、アキ、遅れて金田一と続いている。
「おい、金田一、頑張れよ!」
「剣持のおっさんにオンブされてるお前に言われたかねーよ!」
「だって俺、小1だし」
一番後ろにいた金田一にそう言葉をかけると、金田一は「くそ、ぜってーヤマトは走れるだろ!」と愚痴を漏らした。走りながら愚痴をいえるなんて、体力が有り余ってる証拠だ。もっと走れ。剣持警部は階段を駆け上がり、列車へ飛び乗る。それに続いて佐木や美雪さん、アキも乗り込んだ。俺は今だ降ろされることはないが、数秒遅れて乗り込んで来た金田一が来たくらいに剣持警部がおろしてくれた。さすが警察官、小1を運ぶぐらいならお安いご用なのかもしれない。
さて、そろそろ、「何故、俺が魔術列車に乗ることになったか?」を説明しよう。それは、原作である漫画とは違い、アキが脅迫状のからくり箱を開けてしまったこと、アキがマジックに精通していること、というアキが理由に関係している。話を聞くに、行きたくなかったらしいアキは俺を理由に何度か拒んだが、剣持警部が俺の分のチケットをとった為引き下がれなくなったとか。
実はというと俺だって来たくなかった。何故なら、高遠が犯人だとわかってる上に、高遠と俺は知り合いなのだ。高遠だってやりにくいだろうし、今、精神的に参ってしまっているアキにとっても大変よろしくない。「病は気から」ということで、風邪を引きかけているアキのそれが悪化しないかが俺は心配なのだ。後、殺人事件に巻き込まれるのが面倒くさい。死神はコナンだけでいいっつの。なんで「名探偵」が行く先は殺人事件が起こるのだろうか。やめてほしい、切実に。
「さっきはありがとうございます、剣持警部」
「ん? ああ、いや、気にするな」
「けっ、猫被ってやがる」
「てめーは黙ってろ、金田一」
良い大人に猫を被ってなにが悪い。まぁ、アキとは違い、猫をかぶるのが下手なので、一瞬にして消えてしまったが。剣持警部は俺の金田一に対する態度にきょとんとしたが、すぐに「さては、お前、悪ガキだな!」と言いながら俺の頭をグリグリと撫でられた。久しぶりに撫でられたと感動していれば、それを見ていた佐木がビデオカメラをまわしながらいう。
「飯塚先輩の弟くんって、結構生意気なんですね。飯塚さんのようにお淑やかな感じかとおもってました」
「うるせー、悪かったな、おしとやか系でも紳士系でもなくて。後、弟じゃなくてヤマト。飯塚は二人いるし、ヤマトって呼んで」
そう告げれば、佐木は笑う。
「ヤマトくんですね!僕は佐木っていいます。飯塚先輩にはお世話になってます!」
「そういえば、なのってなかったな。警視庁の剣持勇だ」
「二人の話はアキから聞いてます。いつも姉がお世話になってます」
「小学一年だったか? しっかりしてるな」
「はははは、」
中身は大学院生だからな、とは言えず、苦笑いする。先程から会話に加わらないアキを視線で探せば、どうやら窓際で美雪さんと話しているようだった。
「窓際に佇む二人の美女!絵になりますねぇ!」
そう言ってそちらにカメラを回す佐木に、あぁ、アキも美女というレッテルが貼られてるのだと理解する。成る程、確かに含まれるのかもしれない。なら、俺は美少年だろうか。そこまで考えて、「いや、ないな」と首をふる。俺はそんなキャラじゃない。
ちらり、と腕時計に目線を落としたアキに、げ、と思った。良い子は寝る時間である。確かに眠気は来ているのだが、寝たくないというのが本音だ。
「ヤマト、そろそろ寝る時間だよ」
「そうだな、子供はもう寝る時間だな」
アキの言葉に、剣持警部も頷く。俺は「えー」と渋ってみるが、アキが「ほら、寝よう? 私も寝るから」といった。ぐぬぬぬ。たしかに、そういったアキは疲れているのか眠たそうである。起きていても体の負担になるだけだろう。仕方が無い、付き合うか。とりあえず、目をこすって、その場にいた人におやすみを告げて寝台に乗り込む。せまい、と金田一は騒いでいたが、小さい俺には広いサイズだった。こういうのはこの体に感謝せざるおえない。