狙撃手の名は蠍


「ヤマトはどう思う?」

 とりあえず、警察を迎えに行った毛利警部を見送りコナンと事件現場を眺める。近くで見たらわかることがあるだろうが、遠山さんという仮面かぶったままの高遠が許さなさそうだ。

「物取り、か? でも、指輪ならこんなに荒らさねえよな」
「だよな……」

 そう考え込んだコナンは高遠を見上げる。

「遠山さんはどう思う?」
「僕、ですか?」

 そうキョトンとしてみせた高遠は「そうだなぁ、」と口を開く。子供の前だからかいくらか優しさがある。

「犯人が盗みたかったのは指輪じゃなかったのかもしれないね」
「指輪じゃない?」
「他に高価なものを持っていたのかもしれないし――彼の場合、ビデオカメラを持っていただろう? それに何か映ってしまったのかもしれない。それに、殺したのと盗まれているのは違う話かも」

 高遠の言葉に、またコナンと二人で考え込む。高遠が廊下の先を見たので、そちらを見れば目暮警部と白鳥警部、高木刑事がこちらに向かってきていた。そのまま事件現場の調査をバトンタッチして、他の警察官に案内されるまま部屋に向かう。恐らくそこで捜査の間、このロビーに人を集めてるんだろう。その中にはアキの姿もある。一人ぽつんと本を読んでいるようだが。
 高遠と一緒にとりあえずアキに近づくとアキは顔を上げた。コナンはどっか行った。たぶん、阿笠博士に連絡するとかそういうやつだろう。

「事件ですか?」
「殺人事件ですよ」
「寒川さんがいませんね……彼が?」
「右目を撃たれて、ね」
「右目」

 そう繰り返したアキは少し考える素振りをする。何か思い当たる節でもあるんだろうか。

「アキ?」
「いえ、キッドが狙撃されたのは右でしたよね?」
「ああ」
「今回も右目でしょう? この前、ミス研でそういう殺人犯の話になったんです」
「殺人犯?」

 アキの言葉に首を傾げる。高遠を少し考えた。

「スコーピオン」
「スコーピオン?」
「海外の新聞記事に稀に上がる言葉ですよ。右目を狙撃するスナイパーだそうで」
「ああ! それです!」

 高遠の言葉にアキはポン、と手を叩く。視界の端で西野さんに詰め寄る警察勢が見える。それを見ていれば高遠に背中を押された。

「気になるのなら行ってきてはどうですか?」
「おー、」
「アキは私といますので」

 それにジト目で答える。お前も犯罪者だっての。コナン側が気づいてないだけで。
 俺の視線に、高遠は肩をすくめてこちらを見下ろす。

「明智警視も金田一くんもいないので、ご心配なく」

 そういう意味じゃない。いや、コナンが気づかねえのは、お前の事件にあったことないからだろうけどさ。やれやれと息を吐いて、コナンの側へ向かった。