狙撃手の名は蠍
目の前に現れたのはまさに城である。くすんではいるが、白い外観のその城はこの前のバルト城とは似ても似つかない。ドイツの城――ノイシュバンシュタイン城に似ているそれである。ノイシュバンシュタイン城はシンデレラ城のモデルにもなっているそれだ。管理費がばかにならない気もするが、それほどまでに美しい城である。蘭さんが感激するのもわかる。
「しっかし、なんでドイツ風なんだろうな」
「ええ、夏美さんのお婆さんはロシアの方のはずですし」
アキと二人で会話をして、そっと視線を横にずらす。その人もまた城を見上げていた。
――証拠が、ないんだよなぁ。
そうため息を付いて、今度はコナンを見る。コナンも感心するように見上げていた。後ろか聞こえてきたエンジン音に後ろを向けば、見たことのある――というか見覚えしかないクルマが止まった。でてきたのは――。
「よぉ、コナン、ヤマト!」
「コナンくん! ヤマトくん!」
その声にコナンが「うげ」っと顔をしかめた。俺は半目でそれを見て、博士の隣を悠々と歩いてきた灰原に目をやる。隣に来た灰原に俺は喋りかけた。
「なんで博士と灰原だけじゃなく、探偵団が?」
「江戸川くんから連絡をもらったのよ。あの子達は車に忍び込んでいたの」
そう告げた灰原に「よくやるねぇ」と苦笑いする。ま、正真正銘の小学生なわけだから好奇心旺盛な面は仕方がないだろう。オレも連絡できてなかったし。恐らくはコナンも連絡していなかったんだろう。眼鏡をかけ替えたコナンを見て、ああなんか追跡眼鏡の調整を頼んでたのか、と思う。
「まるでおとぎの国みたい」
「この中にお宝が隠されてるんですね」
「うな重何杯食えっかな?」
通常回転の少年探偵団に、毛利探偵が入らないように釘を刺す。少年探偵団が元気よく返事をした。毛利探偵は恐らくこのまま玄関から入り、鍵を締めるつもりだろう。――が。
「こういう城って別の出入り口隠してあるよな」
「そうね。普通は脱出口があるはずよ」
そう告げた灰原に、少年探偵団を見る。三人が勘付かない事を祈ってるが、三人ともやけに勘が鋭い時があるというか。今静かな事を考えると秘密の出入り口云々には気づいているのかもしれない。恐怖の館のときだって、別の入口を見つけたのは元太だ。
「あら? 今回は少年探偵団が入ることは反対なの?」
「ナイフならまだしも銃相手じゃな。オレも守ってやれるわけじゃねーし」
そう小さく呟いてそのまま『彼女』を見る。灰原がそちらを見た。
「――スコーピオンが誰か、わかってるの?」
「なんとなく、な。ただ、証拠も何もないからコナンと話すしか――」
そこではた、と気づく。今回、あんまりコナンと情報共有も何もしていない気がするのである。今も視線を感じてコナンを見るが苦笑いされただけだ。
「江戸川くんと喧嘩でもしたの?」
「いや? なんにも」
そういって首を左右に振る。
最初はそうでもなかった。現にキッド云々のときは一緒に行動している。それ以降、である。高遠の正体を知った、ということではないだろう。コナンが怪しんでいるのは白鳥警部だったはずである。
「なんなんだ?」
そう首を傾げた俺に、灰原はコナンに近づく。それと同時に乾さんがやってきた。やけに大荷物である。
備えあれば憂い無し、というがどう見ても財宝を盗む装備である。ご苦労なこって。