魔術列車殺人事件05


「アキ、着替えたか!?」
「ええ、着替えましたよ」
「じゃあ、さっさと逃げるぞ!」
「え?」
「この列車に爆弾が仕掛けられてるんだ!」

 金田一の言葉にアキは顔をしかめて、すぐに行きます、先に行っていてください、と告げる。それを聞いて金田一は頷いて走る。俺はアキと一緒に出ることにし、アキは俺のお泊まりグッズが入った小さな鞄と、自分の鞄を持って俺に合わせた駆け足で外へ向かう。

「あ、!」
「!」

 曲がり角を曲がった際、ドン、とアキが誰かにぶつかった。ぶつかってバランスを崩したアキを手を引っ張って止めたのは魔術団の一人、ピエロ左近寺だった。その後ろにいた高遠は眉をハの時にしている。アキもそれを見て一瞬息を飲み、困惑したような表情を見せた。

「ごめんなさい、ありがとうございます、」
「いやいや、こちらこそ悪かったね。……おや? 君を何処かで見たと思えば、さっき、由良間を出し抜いた青い目のお嬢さんじゃないか」
「出し抜いた、だなんて」
「さっきの腕は見事だったよ、どう? 魔術団に入って見ない?」
「あの、」

 眉をハの字にしたアキは戸惑っているらしい。アキは基本、知らない人間に触られるのをよしとしない。つーか、このおっさん、いつまでアキに触ってるんだよ。俺が睨みつけていると、高遠が焦ったように「勧誘は後でもできるじゃないですかぁ!命あってのものですよ!」と割り込んだことにより離される。こいつ、本当に上手いな立ち回り。そのまま魔術団と共に外へ出ると、アキは友達を探すからと理由づけて俺をつれて魔術団から離れた。

「どう、して、あの人が、ここに、」

顔を歪めたアキに、素知らぬ顔で告げる。

「そっくりさんじゃね? 世界にはドッペルゲンガー三人いるっていうし」

ちょっとした励ましのつもりだった。俺の言葉に、アキは困ったように笑って「心配かけてごめんね」と告げた。


「アキちゃん!ヤマトくん!こっちよ!こっち!」

ひたすら金田一達を探していると、遠くの方からかけられた言葉に、アキははっとしたようだった。ぐるりと辺りを見渡し、美雪さん達を見つける。そちらに駆け寄ると、明智警視がいて、初めて見る明智警視にちょっと感動だ。実物は本当にイケメンである。

「明智警視?」
「アキさんまで来ているとは……おや、彼は……」
「私の弟です。ヤマトといいます」
「ヤマトくんですか」
「姉がお世話になってます」
「しっかりとした子供ですね」

 明智警視がきょとんとした表情する。しかし、剣持警部が「そろそろだ、」と言ったことにより、表情を変えた。
 針が12を指すと同時に、大きな音がなった。薔薇の花火が空中にあがる。剣持警部のポケットに入っていた携帯電話が鳴り、金田一がそれを聞く。きっと、地獄の傀儡師からだろう。アキはというと、ひらひらと舞い降りる薔薇の花ビラや花を何処かかなしそうに見つめていた。