魔術列車殺人事件06
明智警視は、この魔術団のマジックを見に来たらしい。死骨ヶ原ホテルでのマジックショーを、だ。元々マジックが好きなのだとか。そんなことをテーブルで挟んで聞く。アキは先ほど拾った薔薇を眺めるだけで話には入ってこない。ぼうっとしているというか。
「アキさん、いつもと様子が違いますね。どうしたんですか?」
「なんか最近、彼奴の様子変なんだよなぁ。ぼうっとしてるっていうか」
「最近、アキは体調が悪りーんだよ」
金田一の言葉に付け加える。風邪ですか?と尋ねて来た明智警視に俺は首を傾げた。
「わかんねー、病院も行く気ないみたいだし」
そんなことを聞いていれば、またかかって来た電話。 金田一がそれを取ると、変声機を使ったような声が微かにきこえた。犯行予告である。それを聞いて、金田一は走り出した。俺もそれに続けば、剣持警部から制止の声が聞こえたが無視をする。聞こえないふりだ。
客室を通り抜ければ、悲鳴が聞こえた。その悲鳴の主はロバートを操っていた見習いの残間さとみさんだった。通路に背をつけて、顔を真っ青にしている。それに声をかけて、金田一がその部屋を見るのと同時に、息を飲むのがわかる。そこには、薔薇と風船に囲まれた幻影魔術団の団長・ジェントル山神の死体があった。
死体に近づこうとして、明智警視に阻止される。目を塞がれるが、今更である。コナンと何体の死体を見たことか。他の少年探偵団にやるべき処置だと思う。まぁ、明智警視の対応が一番大人としてあっている対応だろう。不意に「シュー」という音がして、誰かの「爆弾だ!」という声が聞こえた。アキが「まって、」といいかけた声が聞こえたが、剣持警部が扉を閉めてしまったらしい。扉を締めた音がした。そのままアキと二人、明智警視に庇われるようなる。中からは破裂音が続き、やっと収まったところで、体が解放された。金田一がもう一度、扉を開ける。
そこには薔薇と風船の残骸しかなく、死体なんてものは一つもなかった。
ここまで何も見ていてあれだが、俺はこの消失トリックも犯人もしっかり覚えていたりする。しかしながら、告発する気は甚だない。金田一側はコナンとは違い、殺されても仕方が無い理由があるのだ。今回も、然り、である。後、「知っている」と「止めること」は決してイコールではない。なぜなら、いつどこで殺害したのかもわからないそれを止めることができるか。それはノーだ。しかも、今回のこれは漫画とは少し雰囲気が違う気もする。確か、漫画では前振りとして金田一の表彰云々の話があったはずなのだ。しかし、アキも金田一も美雪さんも佐木さえも話題には挙げない。ということは、起こっていないのかもしれない。
「アキ、なんかわかっ――アキ、顔、真っ青だぞ?大丈夫か?」
「大丈夫、ちょっと、気分悪いだけだよ」
そんなことを考えていると、聞こえてきた金田一とアキの会話。俺はアキを見る。アキの顔は少し青い。
「アキ?」
そう言って、アキの手を握る。手が震えている、それに冷たい。これは、おかしい。知らない男に庇われたのならまだしも、知っている明智警視に庇われたのだから。なら、そうなる可能性はひとつだろう。俺があたりを見渡すが、やはり、その人はいない。
「私の部屋でよければお貸しします。こちらに」
明智警視がアキの反対の手を引いた。俺もそれについて行く。
どうして、その場にいた筈の高遠がいないことに、誰一人気づかないんだ。