魔術列車殺人事件11
劇場の片付けをする高遠と残間さんをよそに、俺は考えこむ金田一の隣を陣取ってみる。と、いうのも、俺がもしこの事件のトリックを知らなければ、金田一と同じ行動をしていただろうからだ。
「はじめちゃん、なにかわかった? って、あれ? ヤマト君もここにいたのね」
「うん、まぁね」
ぐう、と音をたてた金田一の腹に呆れた目を向ける。そういえば、自分もまだ夕食を取っていないことを思い出すと、急にお腹が空いてきた。金田一と同じく鳴ったお腹の音に、美雪さんは「お菓子持ってるよ」といって、奥にいた高遠と残間さんにも声をかけた。
作業の手を止めてやってきた高遠たちも、まだ夕食を食べていないらしい。小さなテーブルを囲い、お菓子を広げ、プチお菓子パーティーが開催される。俺が好きなお菓子を金田一がとっていったので、仕返しに金田一がとろうとしたお菓子を取れば、無言の取り合いになるそれ。
「おい、金田一! それ、俺の!」
「うるせー! お前だって俺のとっただろ!」
「こらこら、喧嘩しない。全く、兄弟みたいなんだから」
「コイツと兄弟〜?」
美雪サンの言葉に、金田一と俺が顔を歪める。金田一と兄弟とかご遠慮頂きたい。わりとまじで。俺にはアキという優秀な姉がいるのだから。まぁ、確かに兄貴がいればこういう感じなんだろうとも思うが。
「あ!また金田一、俺のとりやがったな!」
「へっへーん、ボーとしてるのが悪いんだよ」
「このっ!」
「まぁまぁ、おちついて、僕のをあげますよ」
そう言って高遠が俺の前にお菓子を置く。きょとん、として高遠を見れば笑みを浮かべていたので、「でも、事故であれアキを押し倒したのはゆるさねぇからな」といえば、高遠はまた顔を真赤に染めた。器用なやつである。
「だから、あれはっ!」
「……まぁ、さんきゅ」
ふいっと顔を背けてつげる。それに目を丸くした高遠だが、すぐに「どういたしまして」と返した。ちなみに、隣では美雪さんと金田一による掛け合いがなされている。それを見た残間さんが、恋人か、と聞くが二人は首を左右にふる。俺はニヤリと笑って口を開く。
「違うよ、残間さん、隠してるだけで二人は恋人なんだよ」
「やっぱりそうなの」
「なぁっ!!」
余計に顔を真っ赤にした金田一と美雪さんに、何かが起こる前に退散するかと立ち上がる。間違いなく怒声が飛んでくるだろうからだ。
「じゃ、俺、そろそろ部屋に戻るんで。おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
高遠と残間さんの返事を聞いてその場から離れる。すぐ後に、美雪さんと金田一の否定の言葉が劇場に響いた。近くにいなくてよかったと思う。絶対うるさかったし。ちなみに俺は途中に会った明智警視に回収されてアキの部屋へ行く羽目になった。もうちょっとブラブラしたかったな、とは言えないことだろう。アキはすやすやと眠ったままだ。額に手をあてたが、まだ十分に熱かった。熱は下がってなさそうだ。