魔術列車殺人事件13
トントン、という音が聞こえて目が覚めた。扉の方から聞こえたかとおもい、そちらを見たがどうやら違ったらしい。もう一度聞こえたノック音は、今度は窓を開ける音と共に聞こえる。そちらを見れば、あの奇術師の格好をした高遠さんが部屋に入ってきているところだった。何かを抱えている。
「ヤマト……? ヤマト!」
起き上がろうとした私を高遠さんは制し、ヤマトを隣のベッドへ寝かせる。「大丈夫です、眠ってもらっているだけですよ」と告げた高遠さんに、ほっと息を吐いた。なにやらヤマトの手を胸元へ置いて、その上に赤い薔薇の花をおいた。棺に入れられた人のようで、心配してしまったが、胸が上下しているのをみると本当に生きている。
それをしばらくじっと見ていた高遠さんを不思議に思って、「高遠さん」と声をかけてみる。高遠さんは「なんでもありません」というと、私のベッドの端に腰掛けた。
「ヤマト君は本当にいい大人になりそうだ」
「そう、だといいんですが……」
「おや、彼は私達と正反対の道を歩みそうですよ? それだけでも一般的に言えば『良い大人』でしょう」
「……」
「さて、眠りなさい。アキ」
そう言って高遠さんは一輪の薔薇を私に差し出した。ソレをもらえば、彼は私の額に口付けた。おやすみなさい、いい夢を。優しさを含む言葉とともに、強力な眠気がやってくる。睡眠薬、だろうか。ちらり、と高遠さんを見れば、あの仮面をつけた姿で微笑んでいた。