魔術列車殺人事件15


第三の殺人が起こった。
 その日は、俺はアキと一緒に過ごすからと告げたため、あのトリックを解き明かす現場にはいっていない。でも、簡素なソレを金田一が部屋で見せてくれた。なるほど、実物を見るのと紙面で見るのは違うな、と驚いていれば、佐木さんが金田一を呼びに来たため、金田一はロビーへ降りていった。それから、数十分たった頃である。すぐ近くの部屋から悲鳴が聞こえてきたのは。
 どうやら夢現だったらしいアキが、ちらり、と目を開けて起き上がろうとしたがそれを制す。第三の殺人。夕海さんの殺害。しかし、そこで高遠はミスをして、金田一に見抜かれる。アキの熱はまだ高い。医者に行こうとも、電車がないのだからしかたがない。だから、部屋で安静にするしかないのだ。アイツの仮面が崩れ落ちるのも、もうすぐ、である。

 しばらくして。金田一が勢い良く扉を開けて入ってきた。何事か、と驚いた俺とアキに、金田一は告げる。

「アキ、ヤマト、もう大丈夫だ。謎はすべて解けた」

 そう言った金田一に、俺はホッと息を吐く。ちらり、とアキを見れば、アキは目を大きく見開いていた。アキはゆっくりと起き上がると、金田一に向かって小さく言葉を投げかける。聞こえなかったらしい金田一は、アキを見てぎょっとした。
 アキが、泣いてたからだろう。俺はアキの言葉が聞こえていたため、何も言えなかった。やっぱり、アキは犯人が誰かわかっていたのだ。あのマネージャーが『アイツ』であることも、マジックも。

「アキ?」
「金田一の謎解き、俺も行くよ」
「だめ、ヤマト、」
「大丈夫だって、すぐ戻ってくる。なぁ、アキ。どんな理由であれ、犯罪者は捕まるべきなんだよ」

 ポロポロと泣き出すアキに背を向けて、金田一の背を押して歩き出す。扉を閉めて、ため息を吐いた。むかむかする。それは高遠に対し、で間違いがないだろう。何度アキを傷つけたら気が済むんだ。

「おい、ヤマト?」
「金田一、さっきのアキの言葉聞こえてたか?」
「いや、聞こえなかったけど……」
「なら、いい」

 そう言って金田一の背を押して歩く。

 ――お願い、やめて。犯人を解き明かさないで。

 アキが小さくこぼした言葉が頭のなかで反芻する。どんなことがあっても、犯罪者は犯罪者なんだ、と自分に言い聞かせた。