魔術列車殺人事件16


 始まった推理ショーに、俺は新鮮な気持ちになる。コナンの推理ショーばっか見ているからか、とても新鮮だ。前置きとして、金田一は近宮玲子殺害事件について話し始める。原作では『白い薔薇が血で赤く染まった』が、もともと花瓶に赤いバラがいけてあったらしい。ちってしまったその花びらが近宮玲子の血のようだったから。だから、『血のように赤い薔薇』がモチーフにされているらしい。弟子である四人が殺害した近宮玲子。その死の真相を知った息子である高遠遙一。そこから、この歯車はうごいていたのかもしれない。

 ――地獄の傀儡師は、この中にいる!

 そう告げた金田一に、目を伏せる。さて、金田一が立てた『前置き』だと、左近寺は完璧に犯人ではない扱いなので興味はない。興味が有るのは、高遠の変わり様、ぐらいだ。どよめく周りに、金田一は推理を続ける。金田一が犯人が分かったのは翡翠のせい。夕海さんが叫びを上げ、金田一たちが駆けつける。それが犯人にとって誤算だった。いち早く脱出しなければならない犯人は、あのエレベーターの原理を使い降りようとする。だが、自分の体重が軽かったために翡翠を使うしかなかったのだ。夕海さんより体重が軽いのは一人しかいない。
 佐木のカメラで捉えられていた『体重』。言い逃れができないそれ。

「そう!高遠遙一!アンタが、山神・由良間・夕海を殺害し、無関係なアキやヤマトまで手をかけようとした真犯人!地獄の傀儡師だ!」

 金田一の言葉に、高遠を見る。やはりそうでしたか、とつぶやいたのは明智警視で、俺は口をつぐんだままだ。否定をする高遠に金田一は追撃していく。目を見開いていく彼は、段々『地獄の傀儡師』の顔を覗かせていく。いや、違う。『地獄の傀儡師』ではなく、『俺やアキの知っていた』高遠遙一に変わっていく。ちらり、と高遠を見るが向こうは気がつかない。やれやれ、と息を吐いた高遠についに本性を表したか、と思う。
 自供し始めた高遠の言葉を黙ったまま耳を傾けた。

「僕自身、彼女と会ったのはほんの二回しかありません」

 嘘だ、と思った。なぜなら、高遠はアキと共にもう一度『近宮玲子』のマジックショーを見に行っているからだ。そこから語られた過去には俺はもちろん、アキも出てこない。何度か日本に来たことも、日本の高校へ通っていたことも。黙っているつもりなのか、と思う。だから、彼はアキとの思い出に『区切り』をつけるためにアキと『別れた』。
 左近寺がトリックノートを投げる。ソレを拾い上げた高遠は、数ページめくると剣持警部に言葉を投げた。

「もう、いいですよ。刑事さん」
「なに?」
「それより、左近寺さん。このノートをいただけませんか?母の形見ですので」
「ああ、もってくがいいさ。中身はもう、頭のなかに叩きこんであるからね」
「そう、ですか……」

 高遠が意味ありげに笑う。ソレを見た金田一がはっと呼び止めたが、高遠は無視をして剣持警部に声をかける。そして、ちらりとこちらを見た。

「ヤマトくん、でしたか。君のお姉さんに『お大事に』と伝えておいてください」
「てめぇ、まさか、飯塚に何か!?」
「フフ、それはどうでしょうかね。では、GoodLuck、『小さな』探偵君。またどこかでお会いしましょう」

 高遠はおれに向かってそう告げる。俺は眉間に皺をよせた。うるせーよ、とか言い出さなかった俺は偉い。第一、『またお会いしましょう』ってことは、俺に会いに来るらしい。やめろ。切実に、監獄でおとなしくして、仮出所かなにかで会いに来てくれ。