魔術列車殺人事件17
あれから数日たって。アキの体調は回復したが、未だショックを拭いきれていないようで、どこか空元気というイメージを受ける。そんなアキはまだマジックとは離れていたいのか、金田一が誘ってきた「左近寺の独立マジックショー」を断り、その代わり俺を寄越した。が、左近寺がマジックショーで死んだのをみて、連れてこなくて良かったと思う。見ていたらきっと、またショックを受けるだろうからだ。
左近寺の死亡騒動がおわり、休憩とばかり行き着いたファミレスで俺はオレンジジュースをすする。
「アキは来なくて正解だったかもな。あんなもの見てたらまたショック受けただろ」
「そうよね……大丈夫かな、アキちゃん」
「大丈夫、そのうち立ち直るって」
「そういうヤマトくんも元気、ないんじゃない?」
「そうか?」
美雪さんに首を傾げてみる。俺はアキとは違い、元気である。ただ、アキの心情を察すると、辛いだけで。
「これは、仮定、なのですが。ヤマト君、君とアキさんは高遠の知り合いだったのではありませんか?」
「なんでそう思うんだ?」
「言ったでしょう、仮定です。思いつきに近い。ただ、貴方は金田一くんの推理を聞いている時少し辛そうでしたから」
「……知り合いでも、なんでも、犯罪者は捕まるべきだ。たとえソレが、父親代わりの存在であっても」
「……父親代わり?」
「と、言っても、俺とアキが迷子になってた時に助けてくれて、それから何回かご飯に連れて行ったくれたぐらいだから、『代わり』といえるのかはわからないけどな。でも、マネージャーやってるっていう話も、聞かなかったし。最後にあったの二年前くらいだから、ぼんやり覚えてるぐらいだから、確証はなかったんだけど」
「……彼が『地獄の傀儡師』に変貌する前、ということですか」
「ああ、ただの、優しいお兄さんだったよ、高遠さんは」
「そうだったのね」
嘘と事実を交えながらそう言う。高遠とアキの関係は告げない方がいいだろう。高遠の言葉が、事実なら、アイツはアキに会いに来るだろうからだ。見張りとか増やされてもストレスなだけだしな。眉尻を下げた美雪さんに、辛気臭い話はもうやめだ、と話題を切り替えることにする。
「でも、左近寺って結局なんで死んだんだ?自業自得?」
「いえ、これを見てください。高遠が留置所において行ったノートです」
置かれたノートには、少し違う点がある。高遠が持っていたあのノートには、先ほどの左近寺が死んだマジックのトリックは書かれていない。近宮玲子が下した、炎の鉄槌だった。