Where is Dyle??01
目の前にやってきた柴犬相手に格闘する。いや、この格闘というのは決して犬の虐待とかそういうものではない。
「ちょ、そろそろやめろって、くすぐったい!アーサー」
そう、犬にひたすら構われているのだ。なんだこれ。コナン達がモノを物色している間に俺は柴犬であるアーサーにちょっかいを出した。それにより始まったじゃれあいのようなそれ。俺は人懐っこい犬は嫌いじゃない。流石によく吠える犬は苦手だが、アーサーのような良くしつけられた犬はむしろ好きだ。犬を飼いたいと思った時があったが、よくよく考えれば、俺が世話をせずアキに犬の世話が回りそうなのでやめた。まさに犬をかいたい小学生と母親の図である。
「すっげー懐かれてんな、おめー。犬にモッテモテじゃねーか」
「犬にもててもあんまり嬉しくねーよ、わ、ちょっと待て、アーサー、おすわり!」
俺の言葉におすわりをするアーサー。かわいいとおもって撫でていれば、ふりふりと揺れる尻尾。やっぱりかわいい。やっぱり、犬か何か、この際金魚でもいいから飼いたいな、と視線をアキに向ける。アキはアガサ博士とこの家の主人である加納さんと談笑していた。
ちなみに、何故この場にアキがいるのかといえば、偶然、俺といた時に、少年探偵団とアガサ博士に会ったからが正しい答えだろう。今日、俺はアガサ博士の誘いを断り、アキと見たかった映画を見に行っていたのだが、その帰りにこのメンバーと鉢合わせになったのだ。そして、アキと俺は博士たちに連れられるまま、ここにきたのである。
「飯塚さんもよければ何かもらって行ってくださいね」
「いえ、そんな、」
「どうせ捨てるものですから」
聞こえてきた会話に、俺はグルリと辺りを見渡した。ふと隣を見れば、アーサーは今だ俺の横でちょこん、と座っている。
「アーサー、もういいよ、外で遊んできたらどうだ?」
アーサーにそういえば、俺の周りを一周回って外へかけていく。可愛い。すっげー可愛い。
「やっぱ、犬飼いてーなー。可愛い」
「ははは」
「コナンは何貰うか決めたのかよ?」
「いいや、お前は?」
「俺はあのイースターエッグかな。飛行機は元太に譲ったし」
「イースターエッグ?」
「ほら、あそこにおいてるやつだよ。アレは多分ロシアの土産だったと思うんだよな」
コナンにイースターエッグを指差せば、あれかとコナンが納得していた。コナンサイドでイースターエッグといえば、映画に出てくるメモリーズエッグなのだが、あの事件にまだ遭遇していない。あれ、順序おかしくねーか?ともおもったが、まぁ、金田一と混ざっている時点でおかしいのでいいだろう。
アキは何か決めたのか、と思いそちらを見る。アキは品定めしているらしい。棚に置かれているものを眺めては考え込んでいる。それにコナンが寄って行って首を傾げた。
「アキ姉ちゃん、何かいいのあった?」
コナンの言葉に吹き出す。やべぇ、ぶりっ子に違和感しかない。アキはコナンを見ると、笑みを浮かべた。
「この人形にしよっかな、っておもったんだけどね?」
「人形?」
アキとコナンの目線の先には、人形−−マリオネットが置いてあった。成る程、アキからすればよく使うだろうそれだ。
「でも、これ、二体で一つの人形だと思うんだ」
「二体で一つ? どうしてそう思うの?」
「さて、どうしてでしょう?」
アキが笑ってマリオネットの人形部分をコナンの目線に合わせた。どこかお嬢様のような格好をした女性のマリオネットだ。コナンは本気になって見つめている。不意に、アキがマリオネットを動かすと、コナンがガチで驚いていた。
「あれ、飯塚さん、マリオネット動かせるんですか?」
「はい、まぁ、『趣味程度』なんですが。加納さん、この人形のお相手さんを知りませんか?」
「お相手?」
「此方の人形、確か二体で一つの人形のような気がするのですが」
「よくわかりましたね、それが二体で一つの人形だって。数年前に壊れてしまって、屋根裏にあげちゃったんです」
「もしよければ、壊れてしまった人形と共に此方の人形を頂けませんか?」
「え、いいんですか?もう一つは壊れてしまってますよ?」
「この子だけじゃ可哀想ですから」
そう言ってアキはマリオネットに視線を落とす。加納さんはキョトンとして、探してきますね、と言った。