Where is Dyle??03



「なぁ、アキ。パピヨン見なかった?」

 俺はとりあえず、ダイニングにいたアキに声をかける。作業はだいぶ終わったからか、アキは作業をやめて此方を見た。

「パピヨン、となるとドイルですか?見てないですね。どうかしたのです?」
「なんか、いつもなら鐘の音が聞こえたら和室で座布団の上にドイルが座ってるらしいんだけど、いないんだよ」
「和室?」
「うん、和室の時計の鐘の音で−−」
「先ほどの鐘の音は、和室が出処じゃない気がしましたが」
「和室じゃ、ないところ?」
「ええ、あれは多分……」

 するり、とアキが人形をダイニングテーブルへ置いてから立ち上がる。そしてそのまま、リビングへ向かった。俺は黙ってそれに続く。途中で顔を出した灰原が俺によってきて首を傾げた。

「飯塚くん、見つかった?」
「いや、でも、アキがなんかわかったっぽいからついて行くとこ」
「わかった、というより、鐘の音の出処が和室じゃなくてリビングだと思ったんだよ」
「リビング?」
「パブロフの犬実験ってわかるかな?」
「あれだろ?犬のご飯の時に鐘をならしたら、犬がそれ覚えちゃって、以降それを鳴らすとご飯と思ってくるやつ」
「正しくは、犬のご飯の時に鈴を鳴らし覚えさせた。すると、ご飯がない時にそれを鳴らすと犬は唾液を出すようになった、じゃなかったかしら」
「そう、灰原さんが正解。正しくはそうだよ。だから、ドイルも和室じゃなくて鐘の音で反応した可能性が高いよ」

 リビングに入り、アキはぐるりと辺りを見渡すとオーディオに近づく。

「ちょっと前に使った形跡があるし、」
「でも、スピーカー裏にはいないぜ?」
「ヤマト、灰原さん、ドイルは自分で隠れたのだと思う?」
「?そうだろ、」
「普通に探していないなら、視点を変えないと」
「ドイルは自分で隠れた、ではなく、誰かに隠された?」
「なら、隠しやすい位置は?」
「スピーカー、の、中?」

  はっとした灰原がスピーカーの裏を見た。

「ネジが外れてるわ!」
「じゃあ、俺が蓋を開けるから、灰原は中を確認してくれ!」

 灰原が頷いたのを確認すると、俺はスピーカー裏の蓋を開く。

「ドイル!」
「いたのか?」
「でも、様子がおかしい!」

 灰原が抱き上げるとぐったりとしているそれ。アキはマジマジと見つめると「眠ってるみたいだね」とつげる。俺と灰原はホッと息を吐いた。

「でも、抱き上げられても起きないとなると、おかしいね……睡眠薬でも飲まされたかな……?」
「でも、何のために?」
「それを言うなら、ドイルをスピーカーの中に閉じ込めたのだって何のために、になりますねぇ。隠した人間にとって、ドイルに価値があったのか、ドイルに付属する何かに価値があったのか、それともドイルを人質ならぬ犬質にするつもりだったのか……」

 しみじみと告げたアキに俺は頭を回転させる。ドイルにも数百万価値があるのだ。どれも当てはまるように思える。

「とりあえず、みなさんと合流した方がいいかもしれないね。みんなまだ、ドイルを探しているだろうし−−」

 アキの言葉を遮るようにクリスティとアーサーの鳴き声が聞こえた。興奮したようなそれである。何かあったのか、と顔を見合わして、俺たちは外へ出た。