Where is Dyle??05



 二匹の犬に構われるヤマトを見る。最近無意識にイライラしていたみたいだったけれど、犬のおかげで何時もの表情に戻っている。
 犬を飼うのもいいかもしれないなぁ、と思いつつヤマトから綱島さんに目線を移す。今回、あの焦りようからすれば、犯人は彼なんだろうと推測をつけた。ならば、彼の貰おうとしていたものに首輪の一部がついているだろう。なぜ、どうして、と言っても、この世界に軽い犯罪と重い犯罪があるように、些細な動機から重い動機まで様々な意志があり、事件がおきるわけで。とてもじゃないが、私にはわからない。

「ねぇ、アキ姉ちゃん」

 そばにやってきたコナンくんに「どうしたの?」と首を傾げる。コナンくんは賢い男の子だ。高遠さん曰く、うちのヤマトもそうみたいだけど。

「アキ姉ちゃんは、首輪の一部は何処にあると思う?」
「犯人がこの中にいるなら、多分、自分が貰う物の中じゃないかなぁ」
「貰う物の中……」
「そう、でも、そういうのって意外と気づきやすいんだよね」

 何処かハッとしたような表情になったコナンくんを見るに、謎は解けたのかもしれない。全く、色んな意味ではじめちゃんにそっくりな少年だ。江戸川、といえば江戸川乱歩だけど、彼に何か関係あるのだろうか。

「コナンくんって、江戸川乱歩と関わりがあるの?」
「ないけど、どうして?」
「私の友達にね、金田一耕助の孫がいるんだけど、何かコナンくんと似てたから。それに苗字が一緒だし」
「金田一耕助って、あの昭和の名探偵の?!」
「うん。何か似てるんだなぁ」

 あやふやな感じだけど、似てるのだ。不意に頭をよぎった言葉に、あぁ、と何か納得してしまう。

「――君は真実を見抜くことに使命感を感じているんですか?」
「え?」
「――……いえ、こっちの話だよ。気にしないで」

 そう言ってコナンくんからヤマトに視線を移す。加納さんと蓮木さんによってやっと犬から解放されたらしいヤマトが服をはらっている。此方の視線に気付いたらしく、首を傾げた。
 ヤマトは間違いなく、コナンくんと同じような、はじめちゃんと同じように生きて行くのかもしれないなと思う。将来は警察官になりたいかなぁ、とぼやいていたこともある。私と正反対を行くんだな、と思ってしまったが、それが一般的には正しい道である。
 ポケットの中の携帯が鳴ったので、隣にいたコナンくんに一応断りをいれて応答する。

「こんにちは、アキ」
「!た……」

 高遠さん、と呼びかけて隣にいたコナンくんに目を移す。こちらをキョトンと見上げたコナンくんに苦笑いしてからまた口を開く。

「遠山さん、どうしたんですか?」
「……遠山さん? あぁ、そばに誰かいるんですね? 金田一くんですか?」
「いえ、彼ではありませんが……将来有望株が一人」
「その口振りではヤマトくんではなさそうですね」
「ヤマトも近くにいますよ? かわりますか?」
「いえ、それはまたの機会にします」

 電話越しに聞こえてきた声に、顔が少しにやけてしまうのは仕方が無いことだろう。すこし人の少ないところで電話をしようと、部屋の中に移動する。少年探偵団やその場にいた人も部屋に入って行った。どうやら少年探偵団はヤマトとコナンくんを中心に捜査をするようであある。私は修理しかけのマリオネットの前にまた腰掛けた。もう少しでなおりそうだ。

「お仕事はいいんですか?」
「誰かさんのおかげで失敗しました。今回のマリオネットは壊れた欠陥品だったようで」
「誰かさん?」
「君の幼馴染ですよ。先程もう一度あってきましたが」
「あぁ、はじめちゃんと美雪ちゃんですか」

 電話片手にマリオネットを触る。カチャカチャという音で私が何かに触っているとわかったらしい。何かしてるみたいですね、と話が変わった。

「とある方に、マリオネット人形をいただけることになったんですが、その人形が壊れてしまっていて……直せるので直してしまおうと」
「貴女もとんだ物好きですね」
「でも、二つで一つのマリオネット人形なんです。片方だけが壊れているなら、もう片方も壊すかなおすしかないでしょう?」

 だいぶ戻ったので、上に持ち上げて見る。スムーズに手足が動くようになったそれは男性の形だ。くい、と上をあげれば片手があがったそれ。

「アンティークの物なんですが、とても美しいので見てもらいたいです」
「それはそれは……見せていただきたいですね。そうだ、今夜、ディナーでもどうです? 勿論、ヤマトくんも一緒に」
「そうですね……」

 優しい口調のそれに、また口端が上がる。

「私は、行きたいのですが」
「貴女が来たいのなら、仕方が無い。米花駅で待ち合わせしましょう。それとも迎えに行きましょうか?」
「何処にいるかわかるんですか?」
「私を誰だと思ってるんです?」
「ふふ、私のお師匠さんです」
「そこは『恋人』でしょう? 迎えに行くとしましょうか。では、また」

 きられた電話に弱冠淋しさを感じてながら、マリオネット人形の最後の操り糸をつける。きちんとなおったそれは、やはり価値の高い物だろう、と推測できた。本当にただで貰ってもいいんだろうか。

「アキ、コナンが謎解き開始するってよ」

 そう言ってダイニングの扉を開けてやってきたヤマトをみた。今行きます、といいながら道具を軽く片付け人形を並べておく。

「アキ、なんか機嫌いいな。人形、なおったのか?」
「それもありますが……そうだ、ヤマト。今晩は何処かに外食に行きませんか?」
「外食? 珍しいな。俺は別にいいぜ」
「それはよかった」

 ヤマトの返事に笑みを浮かべて、コナンくん達がいる部屋に入る。
 鳴り響いた鐘の音に、ドイルはかけていく。その姿は可愛らしい。ドイルは何処にいると思う?と首を傾げたコナンくんに対し、和室にいるのでは、と和室に向かうがいない。コナンくんが誘導したのはあのリビングで、スピーカーの中にドイルは入っていた。今回の鐘の音は、探偵団が録音したものらしい。

「ドイルは『鐘の音がする場所』で『いつも使っている座布団に座れ』ば『おやつがもらえる』と覚えちゃったんだよ。犯人はそれを利用したんだ」
「でも、飯塚さんが見つけるまでに私と綱島さんはリビングを探したわよ。それに、それだけなら何処かにいっちゃうじゃない」
「だから、睡眠薬で眠らされてたんだよ。で、ここに探しに来た時に、スピーカーの裏板をはめたんだ。ドイルが起きても出れるようにネジを外してね。そうだろ?綱島さん」

 ヤマトの言葉に綱島さんは肩を揺らした。私には動機が、といいながら焦るその姿に、わかりやすい反応だなぁ、と思いながら、またコナンくん達に目を向ける。

「動機はこれじゃない?」

 はい、とコナンくんが取り出したのは首輪の一部についていただろう宝石だ。

「貴方が持って帰る予定だった時計の振り子についてたよ。徐々に遅れていったから可笑しいな、と思ったんだ」

 そう言って綱島さんをみるコナンくんに、やはりはじめちゃんみたいだな、と笑う。前回の時もそうだが、彼はとんだ頭脳の持ち主らしい。明智警視の小さい頃もこんな感じだったのだろうか。