Where is Dyle??06


 綱島さんが犯行に及んだ理由として、増えすぎた犬の世話ができなくなってしまったから、らしい。それを聞いた加納さんが、犬の為に、と宝石を渡していた。本当にできた人だ、と思う。それを見て、すこし考えたあと、口を開く。

「あの、綱島さん」
「なんでしょう?」
「もし、本当に見きれなくなってしまった時、一頭、引き取りたいです。勿論、貴方が嫌ならそれで構いません」
「どうして……」
「弟に兄弟みたいなのがいたらいいな、と思っただけですよ。これ、連絡先です」
「ありがとうっ……」

 受け取ってくれた綱島さんに息を吐く。ちらりとヤマトをみれば、これでもかというくらい目を輝かせていて少し笑ってしまった。ヤマトが目を輝かせるのは、はじめちゃんをいじめている時・謎解きをしている時・自分の欲しかったものが手に入りそうになった時と限られているので、とても嬉しい。

「でも、どうして私の靴が縁側にあったのかしら?」
「その答えなら……」

 首を傾げた蓮木さんに、コナンくんが私達の背を押した。そのまま物陰に隠れると、外からアーサーがやってきて、蓮木さんの靴をかぷりと加えてしまった。

「こら!アーサー!!いつからそんなイタズラを覚えたんだ!」

 加納さんに怒られたアーサーは一目散にヤマトと灰原さんの後ろへ隠れる。その様子は親に怒られている子供のようで、クスクスと笑ってしまう。

「私、嫌われちゃったのかしら?」
「いいや、その逆だよ。小さい頃、アーサーは人は靴を履かなきゃ外に出れないって覚えちゃったんだ!蓮木さんが大好きなクリスティを連れて帰らないように、靴を隠したんだよ!」
「そうだったの……大丈夫よ、アーサー。私もクリスティも貴方のご主人様についてイギリスについていくことにしましたから」
「えっ、」
「今日は、あの話の返事をいいに来たんです。お受けしようと思って」

 そう言って微笑んだ蓮木さんは綺麗だ。アガサ博士の「めでたいの」という言葉に、二人が結婚するらしいと推測をたてる。うん、おめでたい。
 ちらり、とヤマトに視線を移すと、灰原さんと二人笑いながらアーサーを撫でていた。こちらも幸せそうで喜ばしいばかりだ。それを見た少年探偵団が嬉しそうに声をあげていた。なんでも、バスジャック事件以来、少しイライラしていたヤマトと元気がなかった灰原さんを彼らなりに気にしていたらしい。微笑ましいなぁ、と思っていれば、コナンくんがこちらにやってくる。

「そういえば、アキ姉ちゃん、あの人形なおったの?」
「えぇ、なおったよ」

 とってきますね、と人形をダイニングテーブルに取りに行く。持ってきた人形を見せてみれば、だいぶ綺麗になっていたからか驚かれた。

「わぁ、可愛いお人形さんになってる!」
「さっきの怖い感じがなくなりましたね!」

 そういった歩美ちゃんと光彦くんの前で、マリオネット人形を動かす。

「でも、どうして二つで一つなんですか?」
「それはーー」
「すいません、」

 不意に聞こえた声にそちらを向けば、そこには黒縁メガネをかけた高遠さんがいた。ヤマトがピタリと動きを止めている。凍りつく、とはこういうことだろう。

「こちらに、飯塚アキという人がーー」
「遠山さん」
「アキ、ヤマトくん、迎えに来ました。取り込み中でしたか?」
「な、ななな、なんで!お前が!ここに!いるんだ!」
「おや、アキから聞いてませんか?今日の夕食をご一緒に、と誘ったのですが」
「お前がいるとはきいてねぇ!!」
「では、今。僕も一緒に夕食、いいですか?」

 ヤマトが焦ったようにこちらと高遠さんを見比べるので、微笑めばヤマトは「もういい、わかった」と肩を落とす。

「アキお姉さん、この人は?」
「私の恋人さんで、マジックのお師匠さんです」
「へぇ!」

 歩美ちゃんがキラキラした目を向ける。やはり、女の子だなぁ、と思いながら苦笑していると、高遠さんはマリオネットに目を移した。

「これは美しい……それに、確かに一つだけ残ってしまうと可哀想ですね。二つで一つじゃないと」
「?お兄さんもどうしてわかったの?」
「この人形の洋服ですよ」

 コナンくんの問いに、にこり、と人の良い笑みを浮かべた高遠さん。他の面々は首を傾げた。

「この人形の洋服は、チェコの伝統的な花嫁衣装と花婿衣装なんです。マリオネットはチェコが有名ですから……」
「そうだったんですか!」
「それじゃあ引き離すと可哀想だね!」

 歩美ちゃんの言葉に「でしょ?」と微笑む。不意にスッと花婿の方を高遠さんに取られ、花婿人形が膝を折る形で真っ赤な薔薇の花を差し出した。それを受け取るように花嫁人形を動かせば、わぁ、と少年探偵団から歓声が上がる。 ちらりとヤマトを見れば、ヤマトはムッとしたまま高遠さんを見ていた。