007の妥協したようです
俺の心境は只今、複雑である。
目の前を行くのは、アキと高遠だ。これが高遠が事件を起こす前の光景ならば、まぁ、納得はできる。しあし、目の前を歩く高遠は指名手配をされている身なのだ。変装にしては簡素すぎる、黒縁メガネをかけて髪を少しいじっただけ。それでも周りの人がすり抜けていくのは、アキと仲睦まじく歩いているからだろうか。
そういや、コナンも灰原も反応しなかった。金田一サイドの犯人だからか、それとも、凶悪犯が近くにいるとは思っていないからか。おそらく後者ではないかと思うけど。
店についたのか高遠はアキと俺をエスコートした。どう見てもお高いレストランである。ちなみに、予約は遠山でとっていた。誰だよ遠山って。不意にアキの携帯がなり席を立った為、テーブルには俺と高遠の二人になる。俺の表情を見た高遠が口を開いた。
「不服そうですね、ヤマトくん」
「あぁ、不服だ。不服でしかない。あんたが正式に出所してたなら受け入れたけどな」
高遠はその言葉にはなにも返さない。何かを考えているようだった。しばらくして、『やっぱり貴方は金田一くんに似ているようですね』と口を開いた。
「貴方達姉弟は実に面白い」
「おもしろくねーよ、普通の姉弟だ」
「普通の姉弟? いえ、君はわかっているはずだ。君は金田一くんと同じことに使命感を感じつつある。アキが私と同じことに快感を覚えつつあるように」
「アキはあんたみたいにならねぇ」
「いえ、いつかは彼女は染まるでしょうね。私と同じ色に。引き離すなんて考えるのはお辞めなさい、ヤマトくん。貴方の目の前から、アキがいなくなってもいい、というなら話は別ですが」
今度は俺が口を紡ぐ番だった。今、俺が一人になってしまったら、ちゃんとした生活ができる気がしない。いや、できないだろう。家事もなにもできないし、ただ一人、家に残されるのも耐えられない。
「なんでアキはあんたを選んだんだよ。むしろ、あんたはなんでアキにこだわるんだ」
「貴方が先程の答えられなかったのときっと、同じ、ですよ。誰でも孤独は耐え難いでしょう?それを癒せるのがお互いの存在だ、というだけです。貴方には、最初からアキがいた。しかし、アキには誰もいなかった。だからこそ『僕』と出会った」
高遠の言葉に、深いため息をついた。親がちゃんとしていれば、アキと高遠は惹かれあうことはなかったのだろう。
席を外していたアキが帰ってきた。俺たちの雰囲気に首を傾げたが、高遠がなんでもないと伝えればふわりと笑った。それは、高遠に別れ話を聞かされた後には一切見せなかったものだ。そして、いつかはわからないが高遠と会ったのだろうタイミングに戻ってきた笑顔でもある。
「しかたねーな、妥協してやる」
はぁ、とため息を吐く。高遠がキョトンとしたような表情で俺を見た。
「でも、泣かした瞬間絶縁迫るからな。で、監獄にぶち込んでやる」
「心に刻んでおきましょう」
「何の、話ですか?」
「男の約束って奴ですよ、ねぇ、ヤマトくん」
「あぁ、そうだな、遠山さん」
「……よくわかりませんが、二人が仲良くなったようで嬉しいです」
アキの言葉に、仲良くなったわけじゃない、俺が妥協しただけだとは言えず。高遠はアキの言葉に微笑んでいるだけなので、俺も同じく笑っておいた。