露西亜館殺人事件06
さて。
部屋に辿り着くと律儀に部屋の前でスカーレットさんが待っていてくれた。
「お待たせしました」
「いえ、とんでもない」
扉の鍵を開けてスカーレットさんと室内に入る。一応鍵を閉めてから、スカーレットさんを追った。仮面を外したスカーレットさん――高遠さんは、仮面をベッドサイドのテーブルに置くと息を吐いた。
「まったく、ヤマトくんは私に気づいているんでしょうね。言葉に毒が含まれてる気がします」
「ふふ、でも、ヤマトは親しくならないと毒ははきませんよ」
クスクスと笑えば、高遠さんもクスリと笑う。そして、視線を例の天井へとうつした。
「あの天井、でしたね」
「ええ」
高遠さんは例の場所へ近づくと、本棚を手前に引きハシゴにする。そしてそのハシゴを登った。不意にふらりと揺れる視界……おかしい、眠たくなってきた。何時もまだ起きているはずなのに。
高遠さんは天井を押したり引いたりするが一向に開かない。しかし、右にスライドするとその天井はぽっかりと穴を開けた。
「これは……隠し部屋、ですね」
「……隠し、部屋?」
「アキ、こちらに来て見てください」
手招きをした高遠さんに近づく。少しハシゴの端によった高遠さんの隣に並ぶ。確かに隠し部屋だ。ただ、真っ暗で見えない。高遠さんは私をその空間に登らせてから同じくその空間に登ってくる。
「ここにスイッチがありますね」
高遠さんがスイッチを押せば、明るくなる室内。中には刃物や何かの器具、手錠のようなそれなどが置かれている。埃がかなり被っているのをみると、どうやらかなり長い間誰も踏み入れていない場所らしかった。
私が飾られている刃物を眺めていると、高遠さんは不意に手錠を手に取り私の手にはめた。……はめた?
「え?」
「大丈夫、別にこれを使ってやましい事をしようなどは考えていませんから」
そしてもう片方も私の手にはめる。眠気からかついていけない頭。ポカン、としていると高遠さんは笑った。
「さて、アキ。どうやって手錠を外しますか?」
「どうやって……?」
「貴女には昔に一度教えた筈ですよ」
「……」
高遠さんの言葉に眉を顰める。マジック用のそれ、なんだろうか。試しにマジックと同じ方法を取れば外れたそれ。高遠さんはよくできましたと笑った。
「……マジック用の、手錠でしたか」
「ええ、どうやらここにあるものは全て、昔のマジック用品のようです。しかも、かなりの――」
ぐらり、と体が揺れる。おか、しい。襲ってくるのは猛烈な眠気だ。高遠さんの声が遠くなる。
「――アキ?」
「すいま、せん、たかと、さん、ねむけ、が、……」
またぐらり、と体が倒れそうになるがすぐさま高遠さんが支えてくれた。そのまま高遠さんにもたれかかる。体に力が上手く入らない。目は段々閉じられて行く。
「この症状は睡眠薬……?――あのロシアンティーか」
高遠さんがそう告げたのを最後に私の意識は飛んだ。