奇術師愛好会殺人事件04
玄関先でコナンが倒れていたのはそれからすぐのことだった。誘ったくせに毛利探偵に連れられて帰っていったと思ったが、玄関先で倒れていたらしい。蘭さん曰く「はやくここから逃げろ」と言ったとか。死神が戻った。というか、嫌な感じはこれだったらしい。そこから考えを巡らす。たしか、脱出王さんが殺されてたような記憶があるが。犯人が誰か、まで記憶はないし、覚えている範囲では怪盗キッドが現れることくらいしか覚えていない。電話も繋がらないここは、完璧な陸の孤島、というわけではなく、別のルートから来ることもできるだろうが、時間がかかるだろうそれは不可能なんだろう。まぁ、陸の孤島になってしまったワケだ。
そんなこんなで、来ない脱出王の代わりに誰かがリーダーになることになったらしく、マジック風に決めようと浜野さんが言い出した。園子嬢が目隠しをつけて、印を書き込み、浜野さんが予言するというかたちだ。
仮のリーダーが黒田さん、風呂焚きがかりは田中さん、と次々に命中させるが、最後の最後、宴会部長が土井塔さんである予言は外れてしまい、浜野さんになっていた。それをみていたアキが首を傾げる。みんながわちゃわちゃとしている間に、アキはその紙を見つめた。きょとん、としてから、考え込んだアキに「どうしたんだ?」と尋ねる。
「いや、浜野さんのさっきマジック、浜野さんはミスをしてないんですよ」
「でも、外れたぜ」
「いえ、このミスは彼の責任ではありませんよ」
「浜野さんの責任じゃない?」
「……それくらい、見抜けないと少年探偵団の名が廃れますよ」
クスクスと笑ったアキに、うるせーと返しながら、アキの後に続く。ちょろっとコナンの様子をみたが、まだ目覚めないようだった。
宴会の途中、目が覚めたらしいコナンが言うには、脱出王が殺されたということだった。「まずは一人目、影法師」と書かれたパソコンのモニター。それに危機感を感じたコナンが伝えに来てくれたらしい。アキを見れば、顔をしかめて「はじめちゃんはいないはずなんですが」とつぶやいていた。いや、そこの小さいの、見かけによらず死神だから、とはさすがに本人含む面前の前では言えなかった。
それから、来ない浜野さんに伝えにいくことになり、浜野さんの部屋へ向かう。しかし、肝心の浜野さんは部屋にはおらず――……
「ねぇ、あれ、浜野さんじゃないの?」
蘭さんが指差した先には、裏庭の中央に倒れている浜野さんの姿だった。足跡はない。駆け出すみんなに、今だベランダにいるアキをちらりと見上げる。アキは少し笑みを浮かべて「不可能犯罪、ですか」と小さく呟いた。アキはこの状況を楽しんでいるようにみえたのは気のせいであってほしい。
みんなとワンテンポ遅れてたどり着いた裏庭では犯人探りが始まっていた。死体には近づけないが、あたりをぐるりと見渡すアキは状況を把握しているらしい。これは、コナンが把握するより、アキが解決する方が早いかもな、と推測を立てる。奇術めいた事件はそれに精通した人間のほうが見破りやすい。アキに解決する気があれば、だが。
誰もが「影法師」という影の存在に怯えているようだ。吊り橋は燃やされなくなってしまい、携帯電話も圏外。やはり、陸の孤島。警察の迎えを待つしかないが、夜間にヘリを飛ばすことは不可。なぜなら、墜落の危険性があるからである。イコール、翌朝までこのロッジから出ることは不可能。犯人も、俺達も。これが金田一側の事件なら、惨劇になっていたに違いない。