奇術師愛好会殺人事件05


 暗い雰囲気の中、ダイニングテーブルへみんなで向かい、テーブルを囲んでで迎えを待つ。あーあ、暗い雰囲気だな、と思っていれば、園子嬢が懺悔をはじめた。理由を聞けば、あのマジックめいた決め方での行いを悔やんでいるらしい。

「だって、浜野さんを宴会部長に選んだの私だもん……あの時、浜野さんが一人で部屋にこもってなかったら、きっと狙われてなかったもの」
「いえ、園子ちゃんが気にすることはありませんよ」

 静かに何かを考えていたアキが、微笑みながら園子嬢を見た。

「貴方はマジックのアシスタントをしただけです。この手のマジックは、下準備や協力者が必要なトリックが多いので、全くの無知だった貴方のせいではありません」
「アキちゃん……でも」
「そうそう、飯塚さんの言うとおりだよ。宝くじに外れたからといって数字の的に矢をはなった人を誰も恨んだりしないだろ? あれと同じだよ!君が思い悩む理由はないさ」
「は、はい」

 アキと土井塔さんの言葉に、園子嬢は落ち着いたようだ。話は影法師さんの話に流れ、アキは眉間にしわを寄せた。

「そういえば、影法師さんは、いつも変なことを言ってたわね。私は宙空を舞いその姿を消滅させることができるって」
「ちょっと、それって!」
「そうですね、もし犯人が影法師さんだとしたら、あの不可能犯罪でそれを実演したことになります。僕たちの目の前で、血塗られたマジックショーを、ね」

 土井塔さんの言葉に固まってしまった周り。アキは何を思ったのか指を鳴らして、何処からかピンク色の薔薇の花を取り出した。みんなが驚いている間に、薔薇に手を添え、色を変える。真っ黒に染まった薔薇の花を今度はぐるりと回せば、それはいつの間にか折り紙で折った黒い薔薇の花になっていた。

「すごい、魔法みたいだ!」
「えぇ、でも、これは魔法ではなくマジックです。ちゃんとしたトリックがあります。この事件もこれと同じです。人間は宙空を舞うことも一瞬にして消滅させることも、トリックが必要です。魔法使い、ではないのたから」

 アキはそう言ってまた、薔薇の折り紙をピンク色の薔薇に戻した。どうやら手持ち無沙汰であるらしい。バラをくるくるとペンのように回転させ、最後には園子嬢に渡した。園子嬢は嬉しそうにする。どうやら、不安がる周りを安心させる為や気を紛らわせる為に、さっきの言葉は言ったらしい。
 しばらくして、アキは「ちょっと肌寒いので上着を取りに行きたいです」と先ほどのポーカーフェイスとは打って変わり、困ったような表情で告げる。固まって歩けば安全だろう、という言葉に、蘭さんと田中さん、土井塔さん、俺やコナンという大所帯で移動することになった。

「お前の姉ちゃん、何者だよ、ほんと」
「いや、アキは唯のチートだから。つーか、謎解きはいいのか?名探偵」
「うるせー」
「さっさとしねーと、アキが解決しちまうぜ。まぁ、アキが先に解いたとしても黙ってるんだろうけど」
「はぁ?」
「探偵じゃないから、っていうのが本人の主張だろうな」

 そう言って上着を取り、俺の上着も取り出すアキを見る。アキの場合、面倒臭がりというよりは秘密主義なのだ。それを読めるのは、俺より付き合いが長い高遠ぐらいだろう。

「まぁ、アキは何かしら掴んでると思うぜ。教えてくれるかは別として」
「……」

 コナンが意味深げにアキを見る。お待たせしました、と出てきたアキに上着を渡され、それを着る。次はコナンの部屋である。蘭さんとコナンが上着を着ている間に、土井塔さんがアキに声をかけた。

「さっきのマジック、凄かったよ!何処かで習っていたのかい?」
「幼馴染がマジシャンなんです、彼にならいました」
「マジシャン?」
「はい、マジシャンです。まだまだ修行中で、無名なんですが」

 ふわりと無自覚に微笑んでいるアキにため息をつきたくなる。もちろん、その相手がもうすぐ「犯罪者」になることを知っているからだ。復讐のため、だが。

「そんな反応をするということは、恋人かしら?」
「ち、ちがいます、」

 田中さんの言葉に否定するアキ。恋人なんだから、別に肯定してもいいだろうに。
 次に訪れたのは田中さんの部屋である。服を取り出す田中さんを見ていると、窓が割れる音、少し遅れてボーガンの矢が壁に突き刺さる。窓を開けてもいないだけのそれ、また響いてきた窓が割れる音に、下の階へと向かう。駆け込んだ風呂場の窓には矢が刺さっている。

「なるほど、そういうことですか」

 小さく呟いたアキに彼女をみる。アキの目線はボーガンの矢に向いていた。聞き返そうとしたが、そこから駆け出したみんなに続いて外へ出る。アルバイトの須釜さんの、美しい芸術発言に引いて、まさかコイツ高遠かと勘ぐったが、まだ地獄の傀儡師ではない綺麗な高遠だっとのを思い出し、違うか、と結論づけた。変わった人間はどこにもいるもんだ。

「なぁ、アキ、なんかわかったか?」
「そうですね、ボウガンがなければ成立しない犯罪だった、と言っておきましょうか」

 アキの言葉に首を傾げる。とりあえず、それをコナンに話すことにしよう。

「……つーか、アキ、犯人わかったのか?」
「さぁ、それはどうでしょうか」

 秘密だと言わんばかりに笑ったアキに遠い目をしてしまった。出たよ、秘密主義。しかし、こういう反応をするということは、わかっているのだろう、と推測をつける。 本当に察しが良い姉である。思考回路どうなってるんだ?