露西亜館殺人事件11



「アキ!!」

 扉を開けた瞬間抱きついてきたものに固まる。私は視界を下にずらした。ヤマトが、抱きついてきている。ヤマトが、動いている。

「ヤマト!!よかった!目が覚めたんですね!本当によかったっ!」

 ぎゅう、と抱きかえせば、ヤマトも力を込めたようでそのまま抱き締める。

「アキ、犯人殺したりしてねーよな?!そこまで高遠に唆されたりしてねーよな!?」
「……?殺してませんよ?」

 ヤマトの言葉にキョトンとしながら首を傾げる。高遠さんが『なるほど、その手もありましたね』というのが聞こえた。が、余計に意味がわからなくて二人を見る。ヤマトが安堵の溜息を吐いた。

「……なぁ、今、どういう状況なんだよ」
「今から金田一君が貴方を殺しかけた犯人を解き明かすようですよ」
「そういえば、君は犯人を見てないのかい?」
「見てねーな。部屋抜け出してたし。最後に見てたのは人形とランプだったし」

 犬飼さんの問いに、ヤマトが答える。部屋を、抜けだした?
 その言葉に眉をひそめれば、ヤマトが顔を真っ青にした。

「部屋を抜け出したんですか……」
「げ、やべ!説教は勘弁!」
「ヤマト君、好奇心が強いのも玉に瑕ですね。アキも私も貴方をかなり心配したんですよ。説教くらいちゃんと聴きなさい」

 そう言って高遠さんはヤマトを抱き上げた。ヤマトは怒っている私の近くにいるより、高遠さんのほうがマシだと思っているらしい。珍しいことに、大人しく高遠さんにだっこされている。

「なんか、そう見てると貴方が凶悪犯にはみえなくなってくるわ……」
「いや、梅園さん、それはない。それはダメな例だぜ、アキと一緒で騙されてる。コイツは凶悪犯だからな、一応」
「こら、ヤマト」

 梅園さんの言葉にヤマトが首を振る。それを見てクツクツと高遠さんは笑った。