Farewell of --lady consort02



 とりあえずその日のすぐにしたことは、彼の髪を念入りに洗った後、自分でオフロに入ってもらって新しい服を着せることだった。髪を入念に乾かして、梳かしてみれば随分さっぱりしたようだった。その後にとりあえずおかゆを作って彼に少しずつ食べさせた。まともな食事だからとがっつくのは、胃が吃驚して吐いてしまうおそれもある。だから、すこしずつだ。

「味は大丈夫ですか?」
「ん、」

 彼の様子にクスクスと笑う。まるでその様子は子供だ。私より年上、と聞いていたけれど、栄養が足りなかったのだろうか。今の彼はまさに子供にしか見えなかった。
 彼の目を慣らすために薄暗い部屋。さて、次は何をしようかと考えを巡らす。そして、ふと彼をみて気づいた。

「貴方は左利き、なんですね」
「……マリアは違うのか?」
「いえ、私は両利きです。元は貴方と同じ左でしたが直さないと不便だったので」
「不便?」
「ええ、この世界の多くは『右利き用』に作られていますから。左利きは少ないんです。折角いろいろ覚えるみたいですし、直しておきますか?」
「……」

 少し考え込んだ彼は頷いた。右手の使い方を少し教えれば練習をする彼に笑みを浮かべる。どこかヤマトに似ている気がする。そうこうしていれば、高遠さんが帰ってきたようでノックが聞こた。返事をすれば入ってきた彼はコチラに視線を向ける。

「やはり、身なりを整えるだけで違う。食事も終わったようですね」
「ええ、今終わった所です」
「こちらも舞台の準備を整えました。貴方が生活に慣れればしばらくは台湾人として、そこで働いてもらうとしましょう。いいえですね?」
「ああ、復讐のためなら構わない」
「では、貴方には新しい名を『二つ』授けましょう。一つはホテルオーナーである『王劉仁』、もうひとつは――『龍道』。台湾人の少年の名です」
「――では、改めて。よろしくお願いしますね、龍道」

 すっと私が差し出した手を少年――龍道は握る。時間は限られているけれど、やることはたくさんある。高遠さんは私を見てくすりと笑った。