Farewell of --lady consort04


 ショーを終えて部屋に帰る。とりあえず鍵をかけて、マスクを外し息を吐いた。
 ――どんなことになっても、美雪ちゃんははじめちゃんを信じ抜くのだ。幼なじみで築いた信頼が大きいからか、恋心からか。そして、二人は私に対してもそうだろう。きっと、私が何もしていないと信じ抜いて抗ってくれる。ソレを騙してるのは、私だ。
 どうして、信じてくれるんだろうか。私は欺くのが得意なのに。未だに猫をかぶった私を信じてくれている二人。ソレに対し、私が心の底から信頼しているのは高遠さんとヤマトだけ。私の孤独を理解し、埋めてくれた二人だけなのだ。
 思えば、はじめから欺いていたに違いない。だから、親のことを告げなかった。だから、高遠さんとの関係をだまり続けている。だから、私は彼らに『本性』をみせることはない。それは、多分、ずっと、えいえんに。

「――なにか良いことがありましたか?アキ」
「!高遠さん、」
「口元に笑みが浮かんでますよ」

 そう言って何処からか現れた彼。部屋の中にいたらしい。手を口元へ持っていけば、確かに笑みが浮かんでいた。高遠さんはワイン片手にソファに座る。

「いえ、ショックを受けて――自己解決しただけです」
「ショック?」
「ええ、はじめちゃんを欺いたことにショックを覚えましたが――そんなものは最初からでした、と」
「そうですか。別に気を病んでくれてもいいんですよ?私はそこに漬け込みますから」
「……そんなこといわないでください」

 高遠さんの言葉にクスクスと笑う。本気なんですけどね、と零した彼は私を手招いた。それに従って側によれば、彼はワインの栓を開けた。二つのグラスにソレを注ぐ。赤ワインである。

「高遠さんは計画通りに?」
「ええ、計画通りですよ。彼にはグッスリと眠ってもらっています。後は巌窟王の行動次第、というところでしょうか」

 渡された赤ワインのはいったグラスを見つめる。高遠さんよりは少ない量だ。お酒、は飲んだことがない。未成年だから当たり前なのだけど。グラスを手に取り、高遠さんをみた。

「――貴方の芸術の完成を祈って」

 コツン、とグラスをぶつけてワインを一口飲む。やはり、苦い。少し顔をしかめれば、「アキはお酒を嗜みませんからね」と笑われた。酷い。高遠さんは何処からかコーラを取り出すとワインに注ぐ。

「これはカリモーチョと言われる列記としたカクテルです。思いつきで混ぜたわけではありませんよ」
「カリモーチョ、ですか」

 一口口をつける。甘くて美味しい。これなら確かに飲めそうだ。

 しばらく高遠さんとお酒を飲みつつ雑談していると、頭がくらくらとしてきた。心なしか、暑い。でも、寒いような気もする。ぴとり、と熱を求めて高遠さんいくっつけば彼はきょとんとした顔でコチラを見た。

「アキ?」
「なんですか、たかとおさん」

 ちらり、と高遠さんを見上げる。寒い、ような、暑い、ような。気持ちいい、ような、高揚する、ような。

「酔いました?」
「よってないです」

 手をわけもなく絡ませてみる。たかとおさんの、手。昔と変わらない私より大きな手。高遠さんが興味深そうにわたしをみているけれど、しらないふり。お酒が飲みたくてグラスを見るけれど、グラスの中にはおさけがない。飲み干してしまっていたらしい。あたまが、くらくらする。

「おさけ、のみたいです。からになっちゃいました」
「新しく注ぎましょうか?」
「や、です。たかとおさんのがいいです。たかとおさんの、ください」
「……どれも一緒でしょう?」
「いっしょ、じゃないです。たかとおさんのがいいです。くれなきゃ、うばっちゃいます」
「ほう、それはどうやって?」

 おもしろそうにわらった、たかとおさんをみあげる。くれない、らしい。ならば、とワインを口にふくんだかれにキスをする。ふかくしようとすれば、かんねんしたたかとおさんがワインをわけてくれた。にがいような、あまいような。

「……可愛いことをやってくれますね。貴女がお酒に弱かったとは。新しい発見です」
「よわく、ないです。ただ、きぶんがほわほわしてるだけです」

 そういってたかとおさんにだきつく。たかとおさんはわたしのあたまをなでた。

「フフ、おいで、アキ。今日の夜は長い。事件が起こるまで、暇をつぶしましょうか」

 たかとおさんがわたしのてをひく。うまくたちあがれないでいると、たかとおさんはわたしをおひめさまだっこした。