Farewell of --大阪城の事件簿02
「俺まで呼んでもらえて……本当に有難うございます」
「気にせんでええよ、偉い子やねぇ」
一応家主である服部家夫妻に挨拶を入れる。いや、だってお世話になるんだから、当然のことだと思うし。
「あ、俺、飯塚ヤマトです。今はわけあって毛利探偵のところでお世話になってます」
「そういや、気になってたけど、ワケってなんなん?」
「俺の両親、海外出張中で。いつもなら姉と一緒に暮らしてるんですけど、その姉がイギリスにマジック修行という名目の短期留学に行ってるんです」
「マジック?」
「そう、凄いんだよ、アキちゃんのマジック!」
そうニコニコと笑った蘭さんにこちらも笑う。姉を褒められて嫌な気がしない。
「へぇ、あってみたいなぁー!そのアキさんって子に!」
「別にちゃん付けでいいと思うぜ?和葉さんと同い年だし」
「え、そうなん!?」
驚いた和葉さんに驚くことがあるかと首を傾げる。いわく、高校二年で留学するのがすごいとか。まぁ、アキの場合スペックが周りより頭ひとつ分以上抜きん出てるからな。
「お前の姉ちゃんといやぁ、聞きそびれたがもう大丈夫なのか?」
「海外までついてくる物好きはいないって遠山さんが勧めたんですよ、アキに」
毛利探偵の疑問にそう答えるとたしかにそうだな、との返答。いや、アイツの場合結構自由に出入国していくのだけど。
グツグツと煮えてきたテッチリにワクワクする。テッチリはまだ食べたことがない。是非とも食べたい。
「なんや、しっかりしとるなぁ、坊主。和葉がこれくらいの時はなんやよう泣いたり喚いたりしとったけど」
「ちょっと、お父さん!何いってんの!」
「ははははは」
「そういや、アキ君はハーフなん?目が青いけど」
「ん、クォーターです。母がハーフなので」
「おい、それ初耳」
「だって、言ってねーし。お前はこの前父親に会っただろ、バーロー。察せ」
「察せっつってもなぁ。お前って結構秘密主義だよな。親が飯塚龍一ってのもこの前はじめて――」
「飯塚龍一やって!?」
声を荒らげた平次さんにため息をつく。コナンをジト目で見れば、コナンは一言「わりぃ」とあやまった。毛利探偵はどこか納得したようだったが。そういや、この前のパーティーで父さんの指示で俺とコナンが外に出されたのを見てたなこの人。
「飯塚龍一って、あの飯塚龍一か!?」
「あの飯塚龍一ってどの飯塚龍一だよ」
「んなもん、『ch.』シリーズの飯塚龍一に決まっとるやろ!嘘やろ!?」
「残念ながら、その飯塚龍一だよ」
「やんなぁ、そんなわけって……ホンマか!?」
「平次さんうるさい」
とりあえず耳を塞ぐ。キーンってなるからやめろ。
「飯塚龍一ってダレなん?」
「あほ、21世紀のシャーロック・ホームズといわれる『ch.』シリーズの作者や。『闇の男爵』シリーズの工藤優作に並ぶ作家で、いつも人前に出るときは仮面をつけとる。世界的に有名な作家やで」
「へぇ、すごい人やねんなぁ、ヤマト君のお父さんって」
「言っとくけど、サインは貰えねーからな」
「なんでや?」
服部家婦人にテッチリをよそってもらい口をつける。うん、旨い。
「だって、あの人らは、多分、今年は家に帰ってこねーよ」
「え?」
「元々年に一回会ったらいいほうだからな。今年はなんかしらねーけど年に二回あったから、次に会うのは再来年ぐらいだと思うぜ」
「なんや、穏やかやないなぁ」
「……寂しくないん?」
「アキがいるから、全然。昔、あの人達は親戚のおっさんとしか思ってなかったしな」
和葉さんの言葉に肩をすくめる。うーむ、視線が痛い。
「俺なんかマシな方ですよ、家にはアキがいたんだから。むしろ、姉のアキのほうがずっと一人で暮らしてたので寂しかったと思います」
「おいおい、半ば育児放棄じゃねーか」
「生活費とか学費はちゃんとくれるんで別にイイっす。ちゃんと生活出来てるし」
「そういう問題やない気もするな。ヘタしたら保護もんやぞ。世界的作家だからこそなのかなんなのかはわからへんが」
「なんか困ったことあったら大人に頼るんやで。なんやったらおっちゃん等でもいいさかい」
心配気な服部家父と遠山家父、そして毛利探偵に「ありがとうございます」と告げる。まぁ、いつもどおりなので気にしないことにしよう。