Farewell of
「あれ、アキじゃねぇか!」
降り立った空港ではじめちゃんに呼び止められた。そこには明智警視や剣持警部もいる。どうやら香港からお帰りのようだ。龍道は失敗してしまったらしい。計画が成功していれば、明智警視は死んでいて、はじめちゃんも大手を振って帰国することができないはずである。高遠さんが心配だ。そんな内心をよそに、はじめちゃんと美雪ちゃんに笑みを浮かべる。
「偶然だね、はじめちゃんに美雪ちゃん」
「ほんとに!」
「何処かへ行ってたの?」
わかりきったことを聞いてみる。はじめちゃんはニカリと笑って、「香港にちょっとな」といった。楽しかった?と聞けば苦い顔をされたが、まぁ良い体験をしたとの言葉。なるほど、良い体験ですか。ちらり、と車いすに座る明智警視に目をやる。随分と回復はしているみたいだ。
「明智警視はどうしたんですか?」
「ああ、ちょっと事件に巻き込まれちまって、怪我したんだよ。ま!アキが心配するほどでもねぇよ!」
はじめちゃんの言葉に、それはよかったと伝えれば、はじめちゃんは私に話題をふる。
「アキはイギリスにいってたんだよな?」
「うん、中々有意義だったよ。マジックを教わったと思ったら、いきなりステージに立たされたり……死ぬかと思った」
「アキちゃんがそう言うなんて珍しいね」
「うーん、だって、お師匠さん厳しかったんだもん」
がっくりと肩を落とす。二人は顔を見合わせた。高遠くんは本気で厳しかった。いや、プロになるって多分こういうことだろうけど。しばらく三人で談笑していると、明智警視がよってきた。剣持警部が誰かを連行しているのが見える。ちらり、と合った目。それはまさしく高遠さんで。大きく目を見開けば、彼は何かぱくぱくと口を開いた。アキ、目を合わせんな、とはじめちゃんに手を引かれる。視線を下に落とし、少し体を震わせれば、美雪ちゃんと明智警視が心配して声をかけてくれた。
「大丈夫ですよ、アキさん。高遠は逮捕されました。もう、付きまとわれる心配はありませんよ」
「……彼は、また、何かしたんですか?」
「ええ、香港で少しね」
ふむ、巻き込まれておいて、少し、か。明智さんの返答に、息を吐いておく。すると、貴方が気を病む必要はありませんよ、と言われた。都合のいい方向で納得して頂いてなにより。
さて、高遠さんが捕まって、もう女々しくなる私ではない。万が一、捕まったとしたら、と高遠さんに頼まれたことがたくさんあるからだ。彼が脱獄するまでの間に私がやらなければならないことは多い。がんばろう、と意気込んで、はじめちゃんや明智警視たちと帰ることにした。警察に捕まっても、彼は死ぬことなんてない。
――また、会いに行きますよ。
高遠さんがつぶやいた言葉。ソレを信じて、私はただやることをすればいいのだから。