WhiteChapel Murder06


「……パトカー?」
「え?」

 窓の外からみえたパトカーに首を傾げる。同じく窓際にきたコナンがパトカーを見て眉をひそめた。パトカー、といえば。事件である。まさか、高遠が何か起こしたのか。もしくは高遠がいるとバレたのか。少し冷えた頭に、コナンが「地下のほうだ、いってみよう!」と駆け出した。俺も慌ててソレに続けば、途中で毛利探偵と出くわす。これは何かあったに違いない。俺達はそのまま毛利探偵に続いていくとこになった。

 駆け抜けた先は、まるで水族館のような場所だった。大きなコンピューターが並んでいて、いつもの目暮警部や白鳥警部といったメンツがいる。そこに、たしかに死体はあった。ナイフで一突き、というところだろうか。ボーイが部屋にはいると死んでいたらしい。状況や死因を考えて、息を吐く。高遠が何かしたわけではなさそうだ。高遠なら芸術犯罪を謳っているあたり、こんなやり方で殺さないだろう。密室か何かを作り出すに違いない。しかも、ナイフを血で拭うなんてこともしないはずだ。

「おい、ヤマト、」

 コナンに呼ばれてコナンのそばへと向かう。そこには、キーボードの一部に血の跡が付着しているようだ。

「――どうかしたんですか?警部さん」

 聞こえてきた声に俺は振り向いた。そこにいたのは、まぎれもない父親だ。その後ろからヒョコリと顔を出した高遠に、何してんだ、と眉をひそめる。大方、父親に連れて来られたのかもしれないが。

「上でパトカーが見えたので来たのですが……」
「あなたは……」
「ああ、申し遅れました。飯塚龍一、といいます。冴えない推理小説家です。後ろは義理の息子の遠山くんです」
「先ほどぶりですね、毛利探偵」
「あ、ああ。でも、作家さんと遠山さんがどうしてここに?」
「この部屋は、俺の友人の部屋なんです。警察がこの部屋に入っていくのを見て、何か会ったのかと――……なんでここいいるんだ、ヤマト」

 父親が目敏く俺を見つけたらしい。聞こえた声に肩をびくつかせる。苦笑いすれば、父親は目を細めた。

「――……死体なんてものは子供が見るものじゃない。遠山くんを連れてきて正解だった」
「げ、」
「遠山君、ヤマトを上の階まで連れて行ってくれないか?」
「……ええ、かまいませんよ」

 ひょい、と近くによって着ていた高遠が俺の首根っこを掴む。ちらり、とその際死体を見ていたのはコイツの癖だろうか。毛利探偵に同じ運命を背負わされそうになったコナンが慌てて声をはりあげた。が、時すでに遅し。同じく高遠によって確保された。

「ちょ、遠山さん、おろせって!」
「そうだよ!おろしてよ、」
「降ろしてあげたいのは山々ですが、義父の前ですからね。大人しくしてください」

 二人で暴れては見るが、高遠はそのまま俺たちを部屋の外まで連れて行く。そして、離れたところにおろした。

「ったく、ちょっとくらいいいじゃねーか、遠山さんのケチ」
「離れていても推理くらいできるでしょう。なんせ、『密室』ではなかったということは犯人はここに行き来することが出来る人物、尚且つ、ここに彼がいることを知っている人物に絞られます。外に逃げた線も薄いでしょう」
「……どうしてそう思うの?」

 コナンの問いかけに高遠は肩をすくめた。

「この警察の網からでることは普通は難しいですよ。もう警察が出入り口を完全に封鎖してるでしょうから。それに、ふきとったということは、犯人は凶器を所持している可能性が大きい。しかし、ここには金属探知機があるため、凶器を外へ運ぶことは不可。……まぁ、あとはプロに任せましょう。警察だけでなく、推理小説家二人もいるわけですし。また無理をしてケガをすれば、アキが怒りますよ、ヤマトくん」
「うぐぐ……」

 ひきあいにアキを出されちゃ黙るしかない。露西亜館から、アキは俺に対して心配性になっている。また犯人とあったりなんかしたら、それこそ説教が長引くだろう。

「……ねぇ、遠山さん。キーボードの上の血を見た?」
「見ましたよ。たしか、R・T・Jに血が付いてましたね」
「RTJ……JRT……」

 ブツブツと考えこむコナンに俺も考える。JTR。どこかで聞いたような響だ。それを聞いていた高遠がぽつり、とつぶやいた。

「……ホワイトチャペル・マーダー」
「ホワイト……なんだって?」
「ホワイトチャペル・マーダー……切り裂きジャック……!ジャック・ザ・リッパー!」
「そうか、頭文字を取れば、JTRだ!ちょっとまてよ、切り裂きジャックといえば、19世紀末のイギリス……!」
「!行くぞ、ヤマト」
「おう!」
「どこに行くんですか?」
「コクーンの試乗だよ!」

 そう言って廊下をコナンと駆ける。高遠がおもしろそうにこちらを見ていたなんてしらない。