WhiteChapel Murder07


 大勢の子供に紛れ、コクーンに乗り込み、ヘッドギアを装着する。そして、そのままカプセルが閉まり、意識が一度闇へ沈んだ。そして、また意識が浮上すれば、どこか開けた場所に出た。まわりには同じ参加者だろう子供が多数いる。

「コナンくん、ヤマトくん!」
「げ、蘭ねえちゃん!どうしてここに?」
「コナンくんが心配だからよ!」

 振り向いた場所にいた蘭さんに、アキはいないのかとあたりを探る。が、どうやらアキは来ていないようだ。そういえば、高遠とも一緒に行動してなかったな、と考えを巡らす。いや、あれは父親が高遠を無理やり引っ張ってきた可能性もあるが。

「コナンくん!ヤマトくーん!」
「よぅ、コナンにヤマト!」
「お前らまでか」

 またもや聞こえてきた声にそちらを向けばおなじみの探偵団がいた。どうやら、自分たちでバッチを手に入れた模様。……どうやったんだ?なにげに行動力高いよな、こいつら。そんなことを思いながら、探偵団を見た。楽しそう、だからいいのかもしれない。

「でも、夢みたいだね!ゲームの中を自由に動き回れるなんて」
「その逆よ。今はすべての感覚がコンピュータに乗っ取られているのよ」
「……俺達は操り人形で、糸を切るも切らぬもコンピュータの思惑通りってことか?」
「そういうことね」

 灰原の言葉に俺が言葉を返せば賛同されたそれ。なるほど、楽しい反面恐ろしいことらしい。不意に、声が聴こえた。少年の声だろうか。ゲームのプログラムの声かもしれない。

「――さぁ、コクーン初体験のみんなゲームの始まりだよ」

 その言葉に歓声があがった。周りには5つの門が現れる。おお、なんかテンション上がってきた!

「僕の名前はノアズ・アーク。よろしくね」
「――ノアズ・アーク?……なぁ、灰原、どっかで聞いたことないか?」
「……奇遇ね、私もそう思ってたところよ」

 聞き覚えのある単語に、となりにいた灰原に声をかける。灰原が思いあたることがあるということはパソコン関係のそれか、薬学が、はたまたプログラミングか、のどれかだろうか。理数系であることは間違いない。ノアズ・アークはそのままゲームの説明をする。いわく、このゲームは命をかけたゲームらしい。一人でも生還者がいれば、まわりはみんな生き返る。しかし、いなければ――。
 俺達は全員死ぬ。

「まさにデス・ゲームかよ」
「あら、ふざける余裕が有るのね。飯塚くんは」
「いや、ねーよ。日本のリセットとか意味わかんねぇな。ノアズ・アークのいう事は一理あるだろうが、一理ないな」
「どういう意味です?」
「その論理で行くと、犯罪者の子供は犯罪者になるだろうが。嫌だろ、そんなの。夢のない世界だぜ、まったく。まぁ、確かに、親の職業を次ぐ奴は多いけどな」

 聞き返してきた光彦の言葉に俺は息を吐く。ノアズ・アークの論理で言えば俺は推理小説家である。ない。絶対ない。

「――ないよね。ヒロキくんの命を大人がもてあそぶ権利がなかったように」

 不意にノアズ・アークがこぼした不自然な言葉に、かちり、とピースが埋まった気がした。おそらくその不自然な言葉は外にいる大人からの問いかけに答えたのだろう。
 それより、ヒロキ? どこかで聞いたことがあるような名だ。どこだ?『大人が』という言葉があるということは、ヒロキという人は子供だった?子供、ひろき、コンピュータ、……論文?

「もしかして、二年前に発表された、人工知能の、論文か?」
「どうしたの?ヤマトくん」
「いや、なんでもねーよ」

 パチリ、とはまったキーワード。歩美ちゃんが首を傾げて、隣にいた灰原が目を見開いた。どうかしたか?と首を傾げれば、『いいえ、なんでもないわ』と首を振られる。何かしただろうか。
 さて、そろそろゲームを始めよう。その言葉とともに何もなかった空間にモニターが現れる。それぞれのゲームの解説らしい。
 まず、ヴァイキング。海賊王に俺はなる!いや、ないな。俺、ひ弱だし。船酔いしそう。2つ目、パリ・ダカール・ラリー。これはまだできるだろう。というか、楽しそうである。3つ目、コロセウム。なしだ。すぐにゲームオーバーがみえている、4つ目。ソロモンの秘宝。心躍らせる何かはあるが、これもムリだ。インディとおなじことなんてできやしない。
 そして、5つ目――オールド・タイム・ロンドン。俺の父親と工藤優作が作り上げたゲームである。現実では迷宮入りした事件でもある、ジャック・ザ・リッパーを捕まえるというそれ。ワクワクするそれだ。が、周りはそうではないらしい。弱気になる周りを一番の年長であるだろう蘭さんが励ました。それにすこしだけ落ち着いたようではあるが。
 俺達がオールド・タイム・ロンドンの場所に移動すると、先客が四人いた。見るからに金持ちそうなやつ等である。小学校の高学年ぐらいだろうか。

「ちっ、お前らも一緒かよ」
「足手まといにならないでよ」
「それはこっちのセリフだ!」
「なんだよ、お前ら仲わりーな。なんかあったのかよ」

 やけに喧嘩腰な周りを見て言葉をこぼす。灰原いわく、一悶着あったようで。

「お前らなぁ、親が偉いからって偉いとは限らないだろ。ここは親がいないんだし、俺達も含め、自分でなんとかするしかねーよ」

 そういえば、隣で灰原が正論ね、という。そのまま年上(仮)組をみれば、どこかで見た顔がいた。どこだ、と首を傾げて手をポンとうつ。

「って、あれ、菊川家の息子じゃん」
「あら、知り合いなの、ヤマトくん?」
「いや、知り合いじゃねーし、対面したことはない。でも、この前の子供狂言みたぜ!すっげーおもしろかったし、お前の舞踏が一番きれいだった!」
「あ、ありがとう」
「おい!ヤマト!あいつらと仲良くすんじゃねーよ!」
「ばーろー、素直に褒めるくらいいいだろ。お前らも日本人なら人生で一回は歌舞伎狂言能浄瑠璃もしくは落語を見に行くべきだぜ。凄いから」

 そう言って笑みを浮かべる。あれはすごかったなぁ、と思い出してほっこりした。これは次世代に残してもいいんじゃないだろうか。それに、菊川がいるところは結局は個人の実力主義だ。彼の実力がなければえらく振る舞うこともできないだろうし、プレッシャーなんかもある。
 まぁ、子供狂言は俺は自分で行ったのではなく、アキに連れて行ったもらったんだけど。

 ノアズ・アークの最後の説明曰く、この全てのステージにはお助けキャラとサポートキャラがいるようだ。お助けキャラがホームズ、サポートがワトソンというところだろうか。

「ゲームスタート!」

 ノアズ・アークの声に、コナンが進みだす。それに続いていく探偵団に、俺はちらりと後ろを見た。

「お前らはいかねーの?あ、俺は飯塚ヤマト。よろしくな」

 そういえば、少し眉をひそめたものの「お前はまだ話が分かりそうだな」などという評価を得た。何この亀裂。仲良くしなきゃ解ける謎も解けねーぞ。仕方ない。推理はコナンに任せつつ、探偵団とこいつらの橋渡しをするとしよう。少しでも生存率を上げるために。