WhiteChapel Murder10
「飯塚くんって、変なところでも頭の回転早いわね。ずる賢いというか」
「ソレ褒めてんのか?」
「一応褒めてるわ」
「ちぇ、一応かよ」
ベイカー・ストリート・イレギュラーズのふりをして、婦人に家の中に入れてもらう。温かいミルクティーも入れてくれるそうで。とりあえず、入ったものの肝心のお助けキャラであるホームズが外出中であるらしい。数日は帰ってこないということは、俺達が解決する間はいないだろう。
「ホームズがいないとなると……」
「アルバートさん達に頼るしかないのかな。でも、アルバートさんたちの連絡先は知らないし……」
「俺達が解決すればいいんだよ。捜査資料がどっかにあるだろ」
「そう、ホームズのことだから、どこかに資料があるはずだよ」
「そうね!みんなで探しましょ」
とりあえず、俺は近くにあった資料を手にとって見る。
――アレクサンドラ王女失踪事件の捜査資料。
「アレクサンドラ?」
「どうしたんだ?」
「いや、なんでもない」
反応したコナンにことわりを入れて、その資料をめくる。どうやら蘭さんがジャックザリッパーの資料を見つけたらしい。ソレをある程度聞き流しながら手元の資料に目を落とした。
ヴィクトリア女王最愛の孫娘・アレクサンドラが一年前に失踪した。誰が連れ去ったのかが分からないが、叫び声も何も聞こえなかったらしい。
――この失踪事件の鍵をにぎるのは、恐らく、二年前に同じく失踪したクラレンス公アルバート・ヴィクターだろう。しかし、彼の手だけで彼女を連れ去ったとは考えにくい。この事件には恐らくあの男も噛んでいる。
「アレキサンドラにクラレンス公……ねぇ」
「どうしたの、飯塚くん」
「なぁ、灰原。アレクサンドラの愛称ってなんだ?」
「アリーやアレックスよ。それがどうかした?」
「……やっぱりか」
「どうしたんだよ?ヤマト」
「コナン、ジャック・ザ・リッパーとは関係ねーけど、この資料パース!」
ぽい、っと先ほどまで読んでいた資料を投げる。ソレを受け取ったコナンは表紙をみて顔をしかめた。
「アレキサンドラ王女失踪事件?」
「おいおい、全然かんけねーじゃねーか」
「……いいや、元太。関係なくはないぜ。そこにでてくるクラレンス公は現実世界のジャック・ザ・リッパーの容疑者だ」
「え?」
「まぁ、立件も何もされなかったけどな。でも、もっと重要な事が書いてる。コナン、お前、勘づいてたろ」
「――ああ、」
「だから、二人で納得すんなって!どういうことだよ」
「――ヴィクトリア女王最愛の孫娘・アレクサンドラが一年前に失踪した。アレクサンドラの愛称はアリックス。そして、その事件のカギを握り二年前に失踪している人物がクラレンス公アルバート・ヴィクター」
「ちょ、ちょっと待って!コナンくん!アリックスとアルバートって!」
「間違いないよ、さっきの二人だ。ほらみて、この写真」
コナンがみせた写真はまさしくアキそっくりなアリックスである。美しいドレスを着て、豪華な椅子に座っている。そして、もう一枚の写真が王族の服に身を包んだアルバートだった。
「アルバートさんがアリックスさんをつれさったってこと?!でも、あの二人、夫婦じゃ」
「連れ去った後に夫婦になったんだろ。史実じゃアルバートはプロポーズをするが振られて、アリックスは後のロシア皇后。二人が結ばれる可能性はない」
ジャック・ザ・リッパーがアルバートだとして。なぜ、娼婦を狙うんだ。アリックスを攫う際の犯行を見られたから、とか?いや、まだ、アルバートが犯人だとは限らない。追われる側が追う側を助けるなんて、あまり考えられない。
「とりあえず、モラン大佐のところへ行こう。もしかしたら、二人にも会えるかもしれないし」
そう言ったコナンに、俺も頷いた。