WhiteChapel Murder13


 二人の家は、少し路地に入り込んだ場所にあった。しかしながら、狭いというよりは広いそれ。ホームズたちが住んでいるところよりは広いに違いない。リビングに通されたところで、俺はもう一度アルバートを見る。そして、口を開いた。

「――で、どういうツモリだよ。遠山さん」

 その言葉に、振り向いた彼の表情は見るからに高遠の表情だった。隠そうともしていない。それを聞いていた蘭さんがアルバートを見て、そして口を開く。アリックスは歩美ちゃん達のそばにいた。

「遠山さんのそっくりさんじゃないの?」
「俺も最初はそう思った。ホームズは工藤優作にそっくりだったし、ワトソンはアガサ博士、モリアーティー教授は俺の父さんだったしな」
「え、飯塚龍一ってあんな顔だったのか!?通りでお前とアキさんが美形なはずだよ」
「バーロー、話をおるなよな、コナン。後、俺は平凡だ。嫌味かてめー。これだからイケメンは」
「話が変わってるわよ、飯塚君」
「……まぁ、俺も最初はただ父さんたちが遊び心で入れた存在だと思ってたよ。最初はな。でも、お前、俺に正体わかる言葉吐きすぎ行動しすぎ。平行線云々とか、俺とコナン、菊川をかばった時だってマジックじみた庇い方だったし。つーか、俺達と競ってジャック・ザ・リッパーを探すんなら一緒に行動しねーよ」

 つらつらとそう言えば、「やはり勘が鋭いですねぇ」と言葉を返される。

「え、じゃあ、」
「バレてしまったら仕方がありません。アキ、バレてしまいましたよ」
「え、アリックスさんはアキちゃん!?」

 蘭さんがアリックスを見て声を上げた。俺もそれは予想をしてなかった。アキはデータだと期待していた。諸星がそれを見て声を上げる。

「お前も参加者だったってわけか!?」
「私は大人ですよ」
「じゃあ、どうやって、」
「龍一さんがどうやらプログラムの抜け道を作っていたようでね。貴方達のように、『自分』を投影することはできませんが――このゲームの世界にいる『キャラクター』に投影することが可能だったみたいです」
「キャラクター」
「成りきり、役者ににたソレでしょうか。私もアキも用意されたキャラクターを演じているに近い。私は『アルバート・ヴィクター』という男を。アキは『アレックス』という少女を。まぁ、ハンデはかなりありますが、君たちをサポートするには丁度いい」
「大人がいるなら百人力、じゃねーか!」

 そう騒いだ元太にアルバート――高遠は首をふる。そうだよな、そう甘くはいかないよな。

「残念ながら、そうではありませんよ。君たちとは違い、私達は『決められたルールの中』で動かなければなりません。できる事はサポートぐらいだ。サポート、と言っても自由に動けることはない」
「……ねぇ、遠山さんとアキさんに課されたハンデとルール、ってなんなの?」
「アキは先程からわかるように、しゃべることはできません。それに、文字を書いたとしても君たちとは意思の疎通は出来ない。彼女の書いた文字は全てロシア語に変換されてしまう。それが、ハンデでしょうか。ルールは、彼女は『アレキサンドラ王女』だとバレてはいけない、警察に見つかってもいけない、という感じですね。見つかるとゲームオーバーです。私達は少し別のルートを利用しているために普通に現実世界へ帰りますが」
「だから、喋れないのね」
「ソレって元の設定?」
「いえ、ハンデはこの世界に入り込んできた時のバグですよ。ノアズ・アークが重ねて設定したんでしょう」
「遠山さんは?」
「そうですね、あまり障害にはなりませんでしたが、私が貴方達に話しているのは全てクイーンズ・イングリッシュです。日本語をしゃべると――juaiupojeqr nrmrpqm」
「なるほど、意味がわからん。英語じゃねーと通じないってことか?」
「そういうことです。ハンデはそれくらいでしょうか。ルールは『アルバート・ヴィクター』だとバレてはいけない。『警察』に正体がバレてもいけない。『モリアーティ教授の指示』には立場上従わなければいけない。自分に与えられた『地位のしごと』をこなさなければならない。できなければゲームオーバーです」
「地位ってなんだよ?」
「列車の駅長ですよ。そこで日中は働いてるんです」

 高遠と列車とか魔術列車しか浮かばないんだけど。なにその嫌な組み合わせ。

「と、いうことは、ずっと一緒にいれるアキさんは僕らと意思疎通が難しくて、遠山さんは僕らと意思疎通ができるけど、ずっと一緒にはいれないんだね」
「ええ、なので、もうあんな無茶はしないように。庇いたくてもかばえませんからね」

 そう告げた高遠に、俺達は苦笑いをした。たしかに、高遠がいなければ下手をすれば全員が、下手をしなくても何人かがゲームオーバーになっていたんだから。

「おい、飯塚、メガネ。悪かったな、勝手に行動しちまって」
「いや、大丈夫だよ」
「やっちまったもんは仕方ねーよ、次からはチームワーク重視で行こうぜ」
「そうね、それに貴方達がそう思えたんなら少しは成長したんじゃない?」
「明日から頑張りましょう!」

 そう言って笑った蘭さんに、諸星達は少し嬉しそうな顔をする。
 ……小学校低学年に諭される高学年ってシュールだよな。俺と灰原とコナンは、まぁ、精神年齢は上なんだけどな。