WhiteChapel Murder14


 次の日。高遠は仕事のため朝から家を出て行った。ので、俺達はアキと一緒にホワイト・チャペル地区へ向かった。夜はともかく、朝からのお出かけである。バレてはいけないとのことで、高遠の服に身を包み、帽子をかぶったアキはぱっと見は美少年といったところだろう。

「ったく、驚いたぜ。まさか遠山さんとアキさんがいるなんてな」
「俺もビビった。でも、まぁ、二人がいても俺たちのサポートでしかないからなぁ」
「バーロー、サポートが有るだけマシだろ。え、っと。ここだな。二人目の被害者が殺害されたのは」
「……確か、ハニー・チャールズトンだっけ?」
「ああ、」

 ふと、コナンが何かを見つけたらしい。どうやらバザーの案内だ。

「親子バザー……第二土曜日……なぁ、被害者が殺されたのって何曜日だっけ?」
「9月8日……土曜日!」
「9月8日ってことは、それも第二土曜日じゃねーか……なんか関連ありそうだな」
「ああ!」

 コナンとそう言ったやりとりをしつつ、みんながいるであろう場所へ向かう。ビッグ・ベンの近くにある階段に全員が揃っていた。

「おまたせ!」
「おそかったじゃない。どこへいってたの?」
「ちょっとヤマトと街を探検に」

 そう言って笑ったコナンに、俺も笑っておく。ほんとにコイツ役者だよなぁ。

「のんきだよなぁ、対決の日だってのに」
「ははは、」

 そう言って笑っていると、新聞売の少年がかけてきた。アキは彼を呼び止めると、新聞を一部かう。持っていたお金を少年に握らせ、新聞紙を俺とコナンに渡した。新聞売の少年はまたかけていく。
 俺はコナンとともに新聞をみる。多数の広告欄の中に、ひとつだけシンプルなものがあった。
 ――今宵、オペラ劇場の掃除をされたし。MよりJへ。MからJ、即ち、モリアーティから、ジャック・ザ・リッパーへの指令。

「でも、オペラ劇場の掃除?ってなんだ?」
「――」

 アキが新聞をめくる。そこにあったのは舞台のお知らせだ。

「凱旋公演、ワルシャワ王室 オペラのプリマドンナ アイリーン・アドラー オペラ劇場」
「――掃除が、舞台に出てくる人の殺害予告だとすれば――」
「狙われるのは、アイリーン・アドラーだ!!」

 そう告げたコナンが顔を歪める。アイリーン・アドラー。ホームズが愛した唯一の女性、だったはずである。

「ねぇ、ちょっと待って。もう一つ、MからJへっていう指令があるわ」
「え?」

 蘭さんの言葉に、俺達はまた新聞に目を落とす。そこにあったのは、確かにMからJへと書かれているお知らせだ。

「ロンドンに住む 亡霊夫妻を 退治されたし」
「亡霊夫妻ってなんだよ」
「――!――――――!!」
「どうしたの、アキちゃん?」

 急に顔を青ざめてソワソワし始めたアキに、俺達は首を傾げる。アキは何かを伝えようと口を開くが、俺達には伝わらない。そんなアキは何か思いついたようである。新聞をめくり記事を指さした。しかし、なんの意味のない記事だ。

「?なんだよ、それが亡霊に関係あるのか?」

 アキが首を左右にふる。しかし、指す記事は同じだ。

「う」
「え?」
「彼女が指している文字よ」

 灰原の言葉に、俺達はソレをみる。たしかに、「う」を指している。アキはソレを聞いてうなずいた。そして、また違う文字をさしていく。
 う、わ、さ、ろ、ん、ど、ん、わ、た、し、と、お、や、ま、さ、ん、

「ロンドンの噂ってことか?」
「私と遠山さんってことは、アキと遠山さんってことだよな」

 コクリと頷いたアキ。少し考えて、俺はどうやら戻ってきたらしい新聞売の少年に声をかけた。

「すいませーん、」
「はいよ!って、お客さん、どうしたの?」
「ロンドンの亡霊の噂って詳しく知らないか?」
「ああ、それならしってるよ!一年くらい前かな、アルバート公の亡霊がアレキサンドラ王女を連れ去っちゃったんだよ!そこから二人の目撃情報はあるけど、誰も直接会話したりしてないから、二人共死んだんじゃないかって言われてる。まだ警察が調査してるんじゃないかなぁ。続報を待って!」

 そう言って笑って去っていった少年に、俺達は顔を見合わせた。

「と、いうことは、アキちゃんも遠山さんも、ジャック・ザ・リッパーに狙われるの!?」
「――――、」
「一人でアキ姉ちゃんを置いてたほうが危ないよ」
「まぁ、一緒にいればそれだけ捕まえることはできるってか」
「――――、」
「遠山さんが心配なのか?」

 俺が尋ねれば頷くアキ。あいつが殺されるところとか想像つかねーし、逆に返り討ちにすると思うけど。そう告げれば、アキは困ったように笑った。