WhiteChapel Murder16


 そして、始まったオペラ。

「へぇ、オペラもいいもんだな」
「そうだね、僕の参考になるよ」
「参考に?」
「舞台での動き方や手の使い方、しぐさとか……日本のそれにない美しさがあるから」

 そういった菊川に勉強家だなぁ、と頷く。アキもそう思ったのか菊川の頭を撫でていた。それに少し照れた菊川は前よりも歳相応な感じがする。うむ、こっちのほうが絶対にいい。
 さて、肝心のジャック・ザ・リッパーはどう動くのだろうか。ちらり、と高遠をみる。唯一思考回路が似ている存在だろう。

「遠山さんだったら、どう動く?」
「どう、とは?」
「遠山さんだったら、どう殺すってこと」
「君は私をそんなに悪役にしたいんですか」

 困惑した表情を浮かべた高遠に、「だってお前犯罪者だし」と心のなかでつげる。案外まじめに答えてくれるらしい高遠は少し考えてから口を開いた。

「シャンデリアを落とすのが一番映える死に方でしょうね。あの、オペラ座の怪人のように。しかし、シャンデリアがないとなると舞台の照明を落とす、でしょうか」

 高遠がそう言った瞬間、である。ドン!という音とともに、会場が揺れて周りがざわめき始めた。逃げ惑う周りに「大変なことになりましたね、」と高遠がアキと俺をかばいつつ、眉間にしわを寄せた。

「お前の考え、やっぱりジャック・ザ・リッパーに似たり寄ったりだよ!」
「あぶない!!」

 そう言ってかけて行った二人に、高遠が舌打ちをするのがわかった。もう、あそこまで行ってしまえば、高遠もかばえまい。舞台に走り寄れば、照明の下敷きになった二人。現実なら即死である。
 初めての、犠牲者だ。アイリーン女史に感謝されながら消えていった二人。高遠は一点を見つめていた。

「ここから逃げた方がいい!」

 そう言ったコナンに一点を見つめたままの高遠の視線をたどる。そこにはモリアーティ教授が愉快そうに笑っていた。

「行くぞ、高遠!アイツは後回しだ!」
「わかっていますよ!ジャック・ザ・リッパーはこの混乱を機に襲ってくるはずです!はやく裏口に!!」

 高遠は近くにいた一番足が遅いであろう灰原を抱き上げると、出口へ向かう。アキも歩美ちゃんを抱き上げているのが見える。そのまま全員で裏口にかけるが――。

「あぶねぇ!ヤマト!コナン!!」

 俺とコナンは元太と光彦によって突き飛ばされた。どうやら、石像が落ちてきたらしかった。消えかかっている二人を見るに、どうやらかばってくれたようだった。

「元太くん、僕ら、ゲームオーバーみたいですよ」
「ちぇ……」
「馬鹿!なんでお前ら!」
「そんなの決まってるじゃないですか。友達だからですよ」
「後は頼んだぞ、ヤマト、コナン!」

 そういって消えた二人に、ぎゅっと拳を握る。そして、俺達はそのまままた駈け出した。裏口から外へでて、路地裏をぬける。大通りに出た所で、なにかがコチラに向かってきた。

「下がりなさい!」

 高遠が灰原片手にナイフをナイフで止めた。その隙に蘭さんがソレに蹴りを入れるがくるりと翻って街へかけていく。

「やりますね、毛利さんは空手でも?」
「都のチャンピオンだぜ、蘭さんは」
「きれいな花にはやはり刺がつきものですね、おいましょう!」

 そういって、ジャック・ザ・リッパーを追いかけた。