大海の奇跡02
そのまま連れてこられた先は、博物館のようなそれだった。いや、正しくも博物館らしい。中には数々のトロフィーが飾ってあった。どれもこれも次郎吉さんがとったトロフィーらしい。優勝、最年長記録、どれも輝かしい成績ばかりである。目立ちたがり屋か。
そして、その中の一つにそれはあった。まばゆさは異質ではないが、どこかこの部屋にあることが異質に見えるそれ。金色の女神像。大きな青い宝石を掲げている。
「大きなアクアマリンですね」
「うむ、それはその昔、海賊どもが暴れまわった大航海時代に何度襲われても屈しなかった不沈船、シーゴッデス号が船首に飾り付けていたという黄金の女神像じゃ!」
大航海時代とは。というか、これが餌ってなんだ。釣ろうとしているのは、もしや大怪盗か?
「シーゴッデス号のアクアマリン……人魚の涙が宝石に変化したとされるそれですね」
「そうじゃ!海難を防ぐ力を秘めると伝わる伝説のアクアマリン……その名も、大海の奇跡!!」
「ブルーワンダー?」
「そう、本当はこの像を取り囲むように鉄製の人魚が取り付けられていたらしいが、長い年月で錆びて朽ち果ててしまってのォ。このビッグジュエルを抱えた純金の女神像だけが残ったそうじゃよ」
感心するアキ達をよそに、俺は眉間に皺を寄せる。
「まさか、おっさん、怪盗キッド釣ろうとしてんのか?鯛どころじゃないだろ、それ」
「何時かは嗅ぎつけるだろ―けどな」
「宣戦布告ふっかけるとかないよな?」
「バーロー、ふっかけるとしても、怪盗キッドがノリノリで承諾するわけ無いだろ」
「だよなー」
ははは、と俺とコナンは笑う。飛んで火にいる夏の虫にはならねーよなぁ。ってフラグ他店じゃねーよ。ノリノリで来そうな気がするのは気のせいか?気のせいだよな。
その後は次郎吉さんの話を聞き流しつつ、解散となった。
「怪盗キッドさんは来るんでしょうか」
「何、アキも気になるのか?」
「ええ、すこし」
帰り道、アキと手をつないで雑踏の中を歩く。晩御飯はどこかで買って帰ることになりそうだ。
「この前お会いしました」
「チャットのやつな」
「ええ、そうです。あれから気になって少し調べたのですが、七年前に活動を一度休止されたようですよ。しかし、この前お会いした時、彼は年をとっていても20代前半ほどでした。今の怪盗キッドさんは二代目のようですね」
確か、そうだったような気もする。うろ覚えな知識をもって、考えるがはっきりとはしない。
「気になるのはそこなんですよね。一代目の怪盗キッドはどうなったのか。どうして二代目は、ビッグジュエルばかり狙うようになったのか。ヤマトはどう思います?」
「うーん、一代目が成し得なかったことをしてるとか?」
「いえ、そういうわけでもないでしょう。二代目はビッグジュエルを盗んでは返していますから」
「アキはどう思うんだ?」
「一代目の引退の理由が、ビッグジュエルを絡んだ『何か』だったのでしょう。二代目は、その理由を探しているのか――はたまた理由を知り、復讐をしようとしているのか――」
「怪盗キッドは復讐をする、だなんて奴には見えねーけどな」
「――……そう、ですね」
にこり、とアキが笑って頷く。今日はハンバーグにでもしましょうか、と告げたアキに変に話題が終わったな、と様子をうかがう。
「――アキ?」
「どうかしましたか?ヤマト」
一瞬アキのえみが、高遠のソレに見えただなんて、きっと、見間違いだろう。