大海の奇跡03


 Qステファニー、,これは夢ですか?
 A.いいえ、これは現実です。ジャック、いくら嫌な現実でも、目をそらしちゃダメ!

 俺の脳内はステファニーとジャックがそんな会話を繰り返すほど、現実逃避をしたいらしい。隣にいたアキも、買い物袋をフローリングに落とし、呆然としている。あ、卵と思うぐらいは俺はまだ現実にいるらしい。

「たか、とおさん?」
「おかえりなさい、アキ。随分と遅いおかえりでしたね」

 アキがふらふらと高遠に近づき、本物かといわんくらいにペタペタと高遠に触る。それを受け入れていた高遠はいきなりアキを抱きしめた。そして、アキのてを握った。おいおい、この茶番やめろ。いちゃつくのやめろ。

「本物ですよ、アキ」

 そう言って笑った高遠に、アキがふにゃりと泣きそうな笑みを作る。無性にムカムカするので、エンガチョとばかり突撃すれば、高遠は俺の衝撃すらも受け止めた。なんということだ。ほそっこいくせに。

「また脱獄してきたのかよ?」
「いえ、私は捕まっていませんよ?」
「はぁ?」
「ああ、捕まったのは私の替え玉ですよ。私ではない。あんなことがあろうかと、飛行機でちょっとね。アキやヤマトくんの様子を見るに、まだ警察は気づいていないようですね」

 悪びれもなく言った高遠に離れかけて動きを止める。
 か え だ ま だ と ! ?
 そんな展開、原作にあったおぼえはまるでない。俺達がいることで何かが変わったんだろうか。それとも、書かれていないだけで、そうだったんだろうか。
 高遠を見上げれば、アキを大事そうに抱えてアキを堪能してやがる。高遠爆発しろ。

「このまま警察が気づかなければ、しばらくは穏やかに暮らせそうだ」
「……しばらくは?」
「『高遠遙一』が世間体的には捕まったままでいる、そんなことあると思います?」

 ないな。ないない。
 そうおもって首を振る。しかし、他人をどう脱獄させる気でいるのだろうか。いや、この男には軽いことかもしれないけれど。

「と、いうことでしばらくまた厄介になりますね、アキ」
「はい」

 否定しようとすれば、さきにアキが肯定した。なんてこったい。犯罪者また匿うとか。
 でも、まぁ、しばらくはおとなしくしているようなのでいいか。
 そう無理やり納得させて、ため息を付いた。高遠がそんな俺を見て、嗤ったことに気づかなかったけれど。