血溜ノ間殺人事件(01)


「確か、リバーシがお好きなんですよね。私と一回だけやってくれませんか?」

 目の前にいる星くんに尋ねてみる。彼はこちらを見ずに頷いた。
 ヤマトがまたアガサ博士に連れられて少年探偵団として遊びに出かけたため、私は囲碁部の助っ人として呼ばれた合宿に参加していた。囲碁が打てないというのに、顧問の先生が勘違いしたのである。
 助っ人について詳しく聞き、相手は強豪校だというのも知り、一昨日は囲碁の入門書を片手にずっと囲碁を指していた。ヤマトが相手をしてくれていたけれど、途中でヤマトが飽きてしまい、入れ替わって何処からか帰宅した高遠さんが相手になってくれた。途中まで、高遠さんの知識がつくまでは勝っていたけれど、高遠さんの知識がついてからは惨敗だった。チェスもリバーシも高遠さんに勝ったことがない。何をしても、やっぱり高遠さんは一枚上手だ。
 ちなみに私の試合は今日の昼だ。相手は同じ二年生だけど、そこそこの実力者らしい。用心しておこう。
 そんなことを思いつつ、リバーシの盤に白と黒の石を置いた。

「君は外国で暮らしていたの?」
「いえ、日本暮らしですよ。目は青いですが」
「でも、君はこれを、リバーシ、って呼ぶんだね」
「え?どうして?」
「日本ではみんなオセロって呼ぶから」

 パチンパチンとテンポ良くさしていく。オセロ、そういえば、ヤマトはこれをオセロと呼んでいた気がする。ちらり、と、星くんを見れば、どこか元気がない様子。何かを隠しているんだろう。

「元気なさそうだけど、大丈夫?」
「……ご心配、ありがとうございます。でも、僕は……心配される筋合いもない人間だから」

 そう告げた彼に目を細める。やっぱり何かがあるらしい。なら、この嫌な感覚も頷ける。

「気をつけてね」
「え?」
「嫌な予感がするから。君に関わることで」

 黒い石をおいて、彼の白い石をひっくり返す。あ、という声が聞こえるのと、私が小角部長に呼ばれるのは同時だった。

「見えない悪意に、ご注意を」

 そう静かに告げてその場から去る。小角部長が首をかしげたので、なんでもないと告げておいた。