血溜ノ間殺人事件(02)



「参りました……」

 そう告げた相手に、安堵の息をはく。二勝二敗。これで勝負は明日へ持ち越しである。とりあえず、ありがとうございました、と告げて礼をすれば、はじめちゃんと美雪ちゃん、小角部長が寄ってきた。

「飯塚さん、囲碁強いのね!囲碁やったことあったの?」
「アキちゃんが囲碁さすイメージ、なかったけどなぁ」
「あははは、」

 さすがに相手の前で付け焼き刃、一昨日からはじめましたというのは駄目だろう。しかし、海峰くんの一言により、その気遣いは崩れ去る。

「あれ? でも、先輩、昨日、バスの中で入門書読んでませんでしたっけ?」

 ピシリと固まった私に、周りの視線が向くのは時間の問題だった。

「お、弟が強くて、相手するぐらいだったから自信なくて」
「ヤマトが? アイツ、一昨日ぐらいメールでアキと囲碁するから囲碁のルール教えろって……」
「飯塚さん、もしかしなくても、初心者だったの?」

 小角部長の言葉に目をそらす。それ以上は相手が可哀想だから辞めてあげてください、などとも言えず。とりあえず、申し訳なさそうに、対戦相手であった男子部員さんをチラリと伺っておく。上目遣いになるのは仕方がない。想像とは違い、男子部員さんは、怒っていないようだ。それどころか、肩を叩いて、強いんだな!才能あるぞ!と言ってきた。それに一安心したのは仕方がない。しかしながら、彼は腹黒いようで、その後の視線が大変痛かった。