深夜12時のシンデレラ-1-
――第一印象は、青、だろうか。
この国ではあまり見かけないであろう青い瞳を持った少女。真っ赤なランドセルを背負っているのを見ると、恐らくイギリスでいう初等教育を受けている身なのだろうとわかる。彼女はじっと僕の家の前に泊まるトラックを見て、父親を見てナターシャを見て、僕を見て首をかしげる。その様子がまるで絵本に出てくる少女のようで、クスリと笑ってしまった。そのまま手を振れば、彼女はにこりと笑って手を振る。そして、そのまま隣の家の門を開け中へと入っていった。どうやら、隣人らしい。父親の声に、トラックからの荷物の積み込み作業を手伝う。業者がいるのだから任せればいいものの、気に入らないらしい。
ナターシャに助けられ、自分のものをあらかた片付け終わり、家にいるのが嫌だからと外に出れば先程の少女がいた。
「こんにちは、」
「……こんにちは」
少し反応が遅れてしまったのは、彼女が英語ではなく日本語を喋ったからだ。目が青いし、髪も黒よりは茶色に近い。留学生か、と思っていたが、違うようだ。彼女は背伸びをして、表札を見る。
「たか……たかえ……こうえん、さんですか?」
「たかとお、って読むんだよ」
「たかとお……わたし、おとなりにすんでる、飯塚アキっていいます。よろしくお願いします」
そうペコリと頭を下げた彼女。確かに隣の表札には飯塚と書かれている。ハーフか何かなんだろう。
「僕は高遠遙一」
「遙一さん?」
「くんでいいよ」
「遙一、くん?」
そう首を傾げた彼女の頭を撫でる。彼女は擽ったそうに笑った。その顔に、あ、と思いつく。彼女の目の前に手を差し出し、何もないところから花を取り出せば、彼女は目をまん丸にして僕と花を見比べた。その様子が可笑しくて、また笑えば彼女は目をパチパチと瞬いて、辺りをキョロキョロと見渡し、背伸びをして僕の耳元に口を近づけようとした。僕が彼女に合わせてかがめば、彼女は小さな声を発する。
「遙一くんは、魔法使いですか?」
彼女の言葉に、また笑ってしまったのは仕方がない。なんて、純粋なのだろう。自分を見上げる目は、期待と心配が入り混じっている。
「さて、どうだろう」
嘘はついていない。肯定も否定もしていないだけだ。彼女は目をキラキラと輝かせた。恐らく彼女は僕の言葉を肯定でとったのだろう。
「遙一くんは、魔法使いさん、なんだぁ」
――そうして僕は彼女の魔法使いになったのである。