月夜のワルツ-4-
お巡りさんのに家まで送ってもらう。ゆっくり寝なよと言ったお巡りさんはパトカーに乗って帰って行った。遙一くんは部屋にいてもいい、と言ってくれたけども、遙一くんのお父さんはどうも苦手なのである。家でじっとしていれば、たぶん、明日の朝には遙一くんと会えるだろう。家の中に入ろうとすれば、ピロリンと携帯電話が音を立てた。
「……遙一くん、?」
そう首を傾げて携帯を見る。メールの差出人は。
「マジで隣の家に住んでるんだな」
「……――霧島の、おにいさん?」
よ、っと、手を挙げたのは間違いなく霧島のお兄さんだ。彼は笑っている。幽霊かと思ったけども、足はちゃんとあるので幽霊ではないらしい。
でも、あのテーブルにあった、生首は。
「おーおー、混乱してるなぁ。ま、ドッキリだよ、ドッキリ。びっくりしたろ?」
「ドッキリ?」
「そ。アキを脅かしたくて、高遠たちと話し合ったんだ」
「……そうなのですか、?」
「そうそう。今から種明かしするし、一緒にいこう、アキ。高遠も待ってる」
そう笑った霧島のお兄さんは、どこか怖い。一歩さがれば、霧島のお兄さんは一歩近づいた。
「大丈夫だって、な? 高遠が待ってる」
「ほんとう、に?」
「心配ならメールしたらいい。今から学校に向かいますって」
そう笑った霧島のお兄さんは私の手を掴んだ。私から携帯を取り上げると、メールを打ち込んでそのまま私を連れて行く。
「アキは高遠が好き?」
「……はい、お兄ちゃんみたいで、好きです」
「ふぅん、でも、高遠はお前のこと邪魔だって」
「……!」
「いっつもいっつも引っ付いてきて邪魔だって。あいつ、隠すの上手いよなぁ。アキちゃん、気づいてなかったんだろ?」
霧島のお兄さんの言葉に、思考が止まる。でも、だって、嘘、いろんな言葉が頭でごちゃごちゃするけども、口からは言葉がでない。やっと呟いた言葉は英語だったみたいで、霧島のお兄さんが、俺は英語わからねーっての、といった。
――でも、腑に落ちることもあるのだ。たまにつく、遙一くんのため息は。たまに眉間にしわを寄せるのは。たまに、作ったように笑うのは。私が、邪魔だからだろう。
結局、私は誰からも邪魔でしかないのだ。あの二人も、きっと邪魔だって思ってる。お父さんとお母さんも、私が邪魔だって。遙一くんも、邪魔だって。
――そう、あたりまえのことで、さみしくなんかは、ないのだ。
「あーあー、泣きそうになっちゃって。子供のそういうの、ウザいんだよなぁ。ほんっとに、面倒くさい」
たどり着いた高校の中、霧島のお兄さんが何処かの部屋に入っていく。私はひきづられるようにそこに入る。何かの部屋だろうか。黒塗りのソファに、ロッカー、本棚が並んでいる。しかし、遙一くんはいない。
「……霧島のお兄さん、遙一くん、いな――」
「アキ、ちょっと黙ろうか」
そう笑った霧島のお兄さんのてには紐があった。それを見て、後ずさりする。
――嫌な、予感がする。
逃げようと後ろに下がるけども、壁にあたり、霧島のお兄さんはその紐を私の首にかけた。
「よ、いち、く、」
「呼んでもこねーよ。高遠なら、今頃刑事と一緒だろうしな」
ギリギリと首が締まる。苦しい。目がチカチカする。
「お前、邪魔なんだよなぁ」
そんな言葉に、襲ってきた眠気。耐えられなくなって目をつぶった。