月夜のワルツ-6-



「いやぁ、あれは飛んだアクシデントだったよ。美しく、美女の生首で終わらせたかったのにさー。なぁ、でも、高遠。俺はもう一つお前に見せたいものがあったんだよ」

 追い詰めれば追い詰めれるほど笑う霧島を見る。

「マジック部の部室、行こうぜ?」

 そう笑った霧島に眉間にしわを寄せる。

「アキは何処だ」
「まぁまぁ、そう急かすなっての。なぁ、高遠。俺がなんで藤枝先輩を殺して、姫野先生を殺そうと思ったかわかるか?」
「……彼女が美しいと思ったからかい?」
「いや、それもあるけど、ちゃんと別の理由もあるよ」
「……どんな理由?」
「お前らがやたら親しげにしてとからだ」

そう告げた霧島に、ピクリと手が動く。それを隠すように、口を開く。

「なぜそれが、彼女を殺す理由になるんだ」
「あいつに君が腑抜けにされないかヒヤヒヤしてたんだぜ」
「言ってることがよくわからないな」
「あーつまりさ、同類なんだよ、俺たち! 生まれながらの『犯罪者』っていうか?」
「……」
「そんなめったにお目にかかれない貴重な『同類』が、あんなつまらない女教師になまくらにされたらたまらないからね! それは藤枝先輩も一緒だよ」

 そう言って、霧島はマジック部の部室の前で足を止める。

「あと、あのアキっつう小学生もな」
「――」
「ほら、開けろよ。高遠。あの子が待ってるぜ? どうしたんだ? やっぱり、お前も邪魔だったんじゃないか? だって、どうなってるかわかってるくせに、表情一つ変えていないじゃないか」
「……子供だな」

 そう、霧島をみる。部室のドアノブに手をかけるが、身体は動きそうもない。

「さっきから、君の話を聞いていたが、まるで駄々をこねる子供だよ。自分の気にさわることがあると、すぐに癇癪を起こして人目を引こうとする。我慢する術を知っているアキのほうが随分と大人だ」
「……」
「君の犯行動機は実に短絡的で押し付けがましい自己満足だ。君が犯した犯罪は、美しくもなんともない!君は僕とは似ても似つかない、ただの『無差別快楽殺人鬼』だよ」
「……その通りだよ、高遠」

 その言葉に、振り返る。ナイフを刺そうとしてきた霧島に、やはりか、と眉をひそめた。

「残念だよ、高遠。お前のことは、けっこう気に入ってたんだけどな。ま!せっかくだから、お前には俺の代わりに死神マジシャンになってもらうかなー?あぁ、大丈夫、あのガキと一緒にかざって――」

 ナイフを薔薇にかえる。そしてあっけにとられる霧島を見た。

「今度は僕の番だ、死神マジシャン。血のように赤いバラを――」
 ――どうぞ。

 そう告げて薔薇に見立てたナイフを投げる。白い薔薇は赤く染まり、そして、ナイフにかわった。