月夜のワルツ-7-
マジック部の部室を見上げる。入らなければ、いけないと、わかっているのだ。でも、身体は動かない。この先にはおそらくあの子の死体がある。どういう風に置かれているかはわからない。また、生首だけかもしれない。
「……アキ」
小さく呟いて、意を決して入ろうとする。彼女は僕とかかわらなければ、恐らくこんなことには巻き込まれなかったのだ。いや、霧島に気づかれなければ。あの子は。
その瞬間、ドアノブが回った。
それに驚いていると扉が開いた先から飛び出そうとしたそれは、僕にぶつかる。そして、僕を見上げて、目を見開いて、後ずさりをした。
「アキ!」
「わたし、ごめ、なさ、じゃま、」
そう顔を青くして下がるアキに部室に入る。部屋の中には透明の糸――テグスが張り巡らされていた。それは、まるでものが宙に浮くマジックのようだ。そして、真ん中には不自然な空間がある。子供が一人、入るくらいの。おそらく、元はアキはあそこにいて、何らかの動作をした時、糸が外れたのだろう。変に絡まることがなかったのは、奇跡に近い。
僕が一歩踏み出せばアキは顔を真っ青にして後ろに下がる。しまいには涙を流し始めた。どうして泣かれているんだろうか。霧島のあれをアキに見られた、とは、考えにくい。
「アキ?」
「ごめ、なさ、」
ポロポロと涙を流すアキをそっと抱き寄せる。ピクリと体を跳ねあげたアキは固まった。暖かなそれ。ああ、彼女は生きているのだ、と実感する。
「無事で、よかった」
そう告げて、優しく背中を撫でる。
「怖かっただろう?よかった」
「よ、いちく、?」
「アキが、無事で、よかった」
そうギュッと抱きしめれば、アキはう、あ、と泣き声をあげた。それをあやすように抱きしめ、中につられている糸を見る。コレを外しておかないと、後々面倒なことになる。泣いているアキの頭をなでて、ドアの近くで待つように告げれば、アキはゴシゴシと顔をこすって頷いた。
宙に吊られた糸をとる。アキはそれを見て目を見開いた。アキの背中がトニ当たったんだろう。コツン、と小さく音が鳴った。
そして、ハッとした。アキの首にヒモか何かで絞められた跡がある。おそらく、誰かが糸を持っているという状況が怖いのだろう。それをすばやくなおし、アキを抱き上げた。
「さて、帰ろう、アキ」
アキを抱き上げたまま、外の櫓に向かう。アキに待っとくように告げて、櫓に先ほどの糸を入れ、櫓を燃やした。
「――グッドラック、霧島純平。地獄でいずれ会おう」