飯塚弟と自由研究(終)
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グラスに氷をいれて、緑色のシロップと炭酸水を注ぐ。そうして氷の上にアイスクリームをのせて、赤いチェリーをのせれば完成である。この季節になるとアキがおやつに作ってくれるメロンクリームソーダのレシピだ。たまに赤色や黄色のソーダになることもあるが、スタンダードはやはりこの色だろう。まぁ、渡す相手はパソコンの画面を見ているので気づきもしないが。
「結局、あの日は生態調査できなかったわね、夏休みの自由研究どうするの?」
そう告げた灰原に、ため息をつく。もうあれは仕方がない。海の生物の写真をとっていたカメラに大学生の過失――どうやら水上バイクで死んだ人物をひいたらしい――現場が写っていたので証拠品として警察に持っていかれたのだ。他の人が写っているような写真は念のために消してあったし、海の生き物しかメモリーには入っていないはずである。帰ってくるのはかれこれ一ヶ月後だ。がっくしと肩を落として帰ってきた俺に、アキがクリームソーダを作ってくれたのである。夏の間、アキがちょっとしたタイミングで作ってくれるそれは俺の好みだった。そこで思いついたのだ。知り合いに簡単なレシピを聞いて、まとめて仕舞えばいいのでは? と。アキにクリームソーダの作り方を聞き、安室さんにサンドイッチの作り方を聞き、と言うふうにいろんな人に聞いてまとめた結果、そこそこいいレシピ本になったのだ。あとは味の感想くらいだろうか。少年探偵団やポアロで一応感想は得たが、灰原から聞けていない。
「もう次決まった。なんの研究してるか知らねーけど、あんまり根を詰めすぎんなよ」
そう言ってメロンクリームソーダを灰原の机におく。クリームソーダをみた灰原は驚いたような顔をした。まぁすぐにいつもの表情に戻ったが。
「何これ」
「メロンクリームソーダ。やるよ。味の感想だけ聞かせてくれ」
こう言っておけば後で味の感想メールがくるだろう。
「相変わらず器用ね。将来カフェのマスターでもやるつもり?」
「ならねーよ。器用さもアキほどじゃねぇし……まぁそこそこ自炊ができるようにはなりたいとは思ってる」
「あんまり完璧な男すぎると初恋ばっかり奪って、恋人できないわよ」
「うるせー、お前も同類だかんな」
そう言いながら俺はエプロンをたたむ。これは某お互い小学生だから許される言葉を言うチャンスでは? と思いつつ、まぁお互い結婚していなかったら嫁に来るか? とからかい半分で聞いてみる。灰原はこちらを見ずに、余計なお世話よ、と告げた。もっと、渾身の「はぁ?」が来ると思ったがそうではない。
「そうかい。じゃあな、俺は今から予定あるし。アイスが溶ける前に食えよ」
釘だけ刺さなければ恐らくクリームソーダは放置されることは目に見えている。はいはい、わかったわよ、とまたこちらを見ずに返事をした灰原にまぁいいかと思いながら、博士に声をかけて帰ったのだけど。
博士が言うには、その日、灰原の機嫌が良かったらしい。メッセージで「まぁまぁね」と言う感想がきていたわりに、クリームソーダが美味かったとかだろうか。と、コナンにぼやけばなんとも言えない顔をされた。
……まぁ自由研究発表後にちょっと冷遇されたが。
……いやこれは思い返せば俺の行動が悪いので、高遠に教わった大人向けのカフェオレを作りに行ったのは余談である。
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夏休みの宿題と、君に捧げるようなクリームソーダ