恐怖の館事件(1)


 転生して、はや五年。
 周りの環境に気づいて、絶望して、諦めてはや三年。
 姉の年の離れた恋人を漫画で見たのが六年以上前。毎度ながら、苦笑いしながら、玄関先に立つ男を見てしまう。買い物に寄ってから帰ってきたらしく、何時もより遅くに帰ってきた姉と、その途中で合流しただろうその男。買い物袋だろうそれを持っている垂れ目の男。何度見ても、間違いなく、地獄の傀儡子こと、高遠遙一なわけで。
 おかえり、と言いながらなんとも言えない顔をしてしまったのは仕方がないに違いない。
アキと高遠を交互に見て、ついこの間ばっさり捨てたはずの考えが元通り。やっぱり、この世界は、クロスオーバーしているのだと。

 俺は飯塚ヤマト。小学一年生だ。どうして自我がこんなにしっかりしているかといえば、一般的に前世と言われる記憶があるからである。
 前世は冴えない大学院生だった。が、不慮の事故でどっかーん。即死だった。あ、就活しなくていい、というのが死んだ時に思ったそれであるが、気づいたら転生。この飯塚家の長男、長女であるアキとはかなり歳の離れた弟として生まれてきた。そして、最近引っ越してきた米花町で、自分が有名な漫画の中に生まれて来たのだと悟り、また、あの縮んだ探偵と同じ学年、しかもクラスであることに気づき絶望したのは記憶に新しい。
 でも、ここにまだ傀儡師ではないとは言え、高遠がいるということは、間違いなく、月曜七時から、変わって土曜日のミステリータイムがクロスオーバーしてる世界である。

「……明日は遠足か何かなのかい?」
「え?」
「いや、リュックサックがあったから」

 そう言って首をかしげた高遠に、俺はあぁ、と納得する。確かに高遠が指差す先にはリュックサックがあるし、俺が準備したそれでもある。

「あぁ、なんか今日の夜、友達に肝試しに行こうって言われて」

 そう、今夜、俺は少年探偵団最初の事件に巻き込まれる予定なのである。そんな予定はいらないし、フラグもいらない。拒否する間もなくあれよあれよと巻き込まれてしまったのだ。仲良くしていた覚えはないが、席が近かったのが運の尽きだろう。

「それは、危険じゃないのかい?」
「多分、大丈夫だと思う。近所だし。ただ、アキが許してくれるかが――」

 むしろ、許してくれなくていい。これに巻き込まれたが最後、あの有名な(有名と言っても俺の前世の世界のだが)少年探偵団の一人になるのは嫌だ。引き止められれば、この無謀な肝試しに参加しない為の言い訳ができる=少年探偵団に入らなくてもいい。だから、アキにも見える位置にリュックサックを放置しているのだ。
 早く気付け、アキ、と、アキを見て念じるけれどアキは料理に専念しており、気づく気配はない。
 だが、俺のそんな邪の考えを打ち砕いたのは高遠である。「なら、僕に任せて」と笑って見せたのだ。ははは、なんだこのフラグ。いらねぇ。
 少し遠い目をしてしまったのは仕方がない。高遠はというと、アキの配膳を手伝いに俺の目の前から消えていた。