序・特務司書の話-三-
三人、もとい、くだんの幼女は、まだ蔵書にいたずらをしないだけマシだけれど、佐藤先生の書きかけのキャンパスにキメラを描き上げ(佐藤先生は笑って許してたけど何が描かれているかはわからなかったらしい。独創的だな、とだけ言っていた)、またある一室に死体の山を作り上げ(遊んでとせがまれた按司くんの会派が死体ごっこを提案したらしい。事件現場のように仕立てたのは海野さんと森先生だ)、啄木先生の顔に第三の目を作り立川さん達が爆笑したり(その後、二次被害として笑った萩原先生が彼女の書類に紅茶をこぼした)、挙げ句の果てに棋院くんがあまり怒らないからと彼の書類にうにょうにょと文字を書き足したりする。
こんなことを聞いていれば平和な悪戯だと思うだろう。驚かされることがないから。でも、それが毎日続けばたまった物ではない。しかも、あの子のそばにいる堀先生や高村先生が他の会派の手伝いに行ったときにそれはおこるのだ。目を離した隙に、というのはこういうことだな、と館長と僕は頭を抱えたのも記憶に新しい。
と、言うわけで『潜書することがない』菜乃花の会派が複数人いるのはそう言う理由がある。最初から「お兄さん」をしている堀先生、基本的には見守っているけれどダメなときはきちんとストップをかける高村先生、菜乃花と遊んでくれる宮沢先生と新美先生。そんなメンバーで菜乃花による『侵蝕』を防いでいるのだ。まぁ、実際は二人ずつ日替わりで他の司書の手伝いとして潜書しているのだけれど。
よく転生してきた文豪達が言うのが、どうして図書館に子供がいるのか、ということだ。こんな非常事態の図書館で、いくら文豪を転生させる力が大きいからといって子供を巻き込むのはどうなのかと。ソレはある意味もっともで、猫の上司や政府からやってきた職員もよくそういう。でも、元からいた僕らは菜乃花がどうしてこの図書館にいるか知っているから何も言わない。最終的にはどんな言葉も、館長の一言で黙らせることが出来るのだけど。
「菜乃花は俺の姪っ子で、今あの子の両親から預かってるんだよ」
――そう、そのたった一言で。
ああ、いけない、このままだと菜乃花はとんだいたずらっ子で、館長の姪だという今年か言えなくなる。特務司書「見習い」である菜乃花にもきちんと仕事があって、毎日その仕事をちゃんとこなしている。
まず一つは、一日最低三回、文豪や司書、職員のお手伝いをして、カードにスタンプをためること。最近はスタンプの種類が増えてカードもとても可愛らしくなった。カードを首に提げてちょこちょこと図書館を走り回る様子は一部の文豪のいやしとなっているらしい。
二つ目は、図書館に届く手紙や文豪間の手紙の振り分け。元は菜乃花のお父さんからの手紙を待っていて始めたことらしいけれど、今はもうすっかりと菜乃花の仕事として定着している。時には郵便配達もこなすけれど、偶に人を間違えてしまうのはご愛敬だ。
三つ目は、絵日記を書くこと。僕の報告書以外に実は司書は全員手帳に各自記録をつけている。菜乃花の絵日記はそれの代わりだけれど、最近コレは「あのね帳」じゃないかともおもう。添削は館長がしていたけれど、最近は文豪がしていて赤ペンで正される絵日記帳はなかなか読み応えのある物になっていた。。
今日も、菜乃花の絵日記はこう始まるのだろう。
――ぱぱ、今日はね、
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