「菜乃花を見なかったかい?」
 そう困ったように僕の部屋にやってきたのは高村先生だ。文豪達が潜書している手紙のそばで書類仕事をしていた棋院くんが首を左右に振る。
「東さんの部屋には来てませんよ」
「可笑しいなぁ、菜乃花の司書室や他の司書室なんかを見ても見当たらないんだ。クレヨンが転がっていたから、そのうち戻って来ると思ったんだけど、戻ってこないし」
 高村先生はそう言って頭をかいた。同じく報告書をまとめているらしい立川さんが「いつもみたいに中庭じゃないですか?」と尋ねる。高村先生が首を左右に振った。どうやらもうさきに見ていたらしい。僕らがポンポンと菜乃花のいそうな場所をあげるけれど、そのどれもを高村先生は見てきたようで。これは大事になるかもしれない。僕がそう考え始めたところで、海野さんが書類から顔を上げずに按司くんに声をかけた。
「按司、出番ですよ」
「はぁ?」
「かくれんぼ、得意でしょう? 探してあげたらどうですか」
「……時期に帰ってくるだろ」
 海野さんの言葉に按司くんが投げやりに答える。海野さんは彼を見た。
「先ほどから会話に参加しない貴方には何か心当たりがあるのでは?」
「按司、本当に何かしらないかい?」
 高村先生も心底困ったように彼を見る。彼は大きく息を吐いて、頬杖をついた。
「子どもと言えば、秘密基地が好きだろ」
「秘密基地?」
 僕は首をかしげた。図書館は入り組んでいるから、確かに何処かに作ることも出来るけれど、文豪達がそれとなく何処かにいるから完全な「秘密基地」はないのでは。按司くんはやれやれという風に答える。
「図書館の奥の方に子どもだけが入れそうなスペースがあるんスよ。コソコソお気に入りのモンとか菓子とか持って行ってくのを見たから、多分いるならそこ」
「そこまで分かるなら、迎えに行ってきてください」
「ガキしか入れないスペースにこの中で一番デカイ男の俺が入れるかよ。お前か立川、堀センセあたりしか無理」
「そういうことなら、按司、立川さんと高村先生を案内してやってくれ」
 そう笑顔で告げた棋院くんに、按司くんは諦めたように肩を竦めた

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