二
「やっぱりいたのか、棋院」
「なんでお前がここに!」
「なんでって……お前と一緒だよ」
そう言って彼は携帯灰皿にタバコを押し付けると窓を閉めた。聞いてないぞ! と言った棋院くんに彼はにやりと笑って「言っていないからな」と言葉を返す。
「知り合い?」
「大学の友人です」
「どうも。按司隼人です」
そう頭を下げた彼――按司くんに「俺はただの事務員だからそんなにかしこまらないで」と手を左右に振った。彼はまた少し笑う。それが恥ずかしくて、僕はすぐ近くの談話室を見る。
「談話室に行かないの? 別にあそこも吸っていいはずだけど」
「あぁ、でも、女子供がいたから」
「女子供……」
「多分、特務司書だと思うよ」
「……女はともかく、子供でもなれるのか」
「菜乃花は偶然の連鎖でそうなっただけだからなぁ……一応見習いってなってるよ」
「偶然の連鎖? そりゃあもう必然だろうよ。お前と同じくあの子供はそうなる運命だったってわけだ」
肩をすくめてみせた按司くんに、君もでしょう? と言えば按司くんは目を少し見開いた。そして自嘲するような笑みを浮かべる。
「そうかもな」
「そうかもなってなんだよ。そうだからここにいるんだろう? あぁ、按司、ちょっと扉をあけてくれないか。俺たち、手が塞がってるんだよ」
按司くんはため息をついて扉を開ける。中には館長と猫、子供――菜乃花と女の子がいた。いや、女の子というより女性が正しいだろうか。髪を後ろで一つにくくった彼女は図書館の制服に身を包んでいる。普通だな、というのは失礼な言葉だろうか。
「ああ、悪いな、手伝って貰って。ありがとう」
そう言った館長に棋院くんは「いいえ」と断って首を左右に振った。緊張したような面持ちの女性が、これで全員ですか? と首をかしげる。
「ちがうよ! だって、東は『じむいん』だもん」
元気よく告げた菜乃花に、女性は目を瞬く。僕は苦笑いして「僕は違いますよ」と彼女に告げる。
「後もう一人は女の子だったかな。彼女は特別だから――」
そう告げた館長の言葉を遮るように、ノック音が響く。来たようだな、と告げた館長は「どうぞ」と入室を促した。
「申し訳ございません、遅れてしまって」
謝ったのは少年のような姿の少し時代錯誤な格好をして女性だった。なぜなら刀を腰につけていたからだ。僕達の視線に気づいた彼女は「抜けませんよ」と告げる。どうして図書館に刀が必要なのかはわからない。確かに布で縛り付けてあるそれは抜けないようになっているんだろう。僕はそっと館長を見る。館長は苦笑いをしただけだった。
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