「これで全員だな。君たちは今日から特務司書としてこの図書館で働いてもらうことになる。まだ手探りだから、色々と不便をかけるだろうが、よろしく頼む」
 館長の言葉に、それぞれがそれぞれの反応をした。緊張したように、真剣に、何か思いをはせるように、戸惑ったように。菜乃花だけがワクワクとしているのか、元気な声で『はい!』とうなずいた。そんな返事を聞きつつ、僕は四冊の不思議な本を館長の机に並べる。青く光るそれは、あの文字がぐちゃぐちゃになってしまった本と一緒に最近見つかったものだ。それを通して『文豪』を転生させることが出来る、というのは棋院くんが『彼』を呼んだときに僕が見ていたから知っていることなのだろう。
「自己紹介は『彼ら』を転生させてからにしようか。さぁ、好きな本を一つ選んでくれ」
「一冊足りないじゃないか?」
 そう指摘した按司くんに、棋院くんが首を振った。
「俺はもう呼んだからいいんだよ」
「読んだ?」
 首をかしげた図書館の制服を身につけた女性に、棋院くんは苦笑いする。
「ああ、えっと、違うんだ。まぁ、とりあえず、俺はいいんだ。四人で好きにとって。俺は先生を呼んでくるから」
 そう言って、棋院くんは部屋を後にする。最初に菜乃花が本を取り、続いて制服を着た女性が本を取り、按司くんが本をとって、迷ったように刀を持った彼女が本をとった。彼らが本を手に取った瞬間、灯っていた青色がより一層強くなった気がする。それは暖かな光のように。
「似たようなものかな」
 そう小さくつぶやいたのは刀を持った女性だった。本をまじまじと見ていた彼女は目を伏せる。より一層青い光が強くなり、本が捲れ、パラパラとページが動き出す。本に書かれた文字浮かび、人の形を形作りあげ――それはひとりの男性へと姿を変えていく。
 まさか、と僕は館長を見た。館長は目を見開いて、傍らにいた猫が目を細める。姿を現した男性が、ゆるりと目を開いた。そして、その瞳は彼女を移す。
「――佐藤春夫だ。門弟三千人の人望は伊達じゃないぜ」
「佐藤先生ですね。私は海野遼と申します。規格外ですがよろしくお願いします」
「規格外? よくわからないが」
 そう首をかしげた男性――佐藤春夫と名乗った、ということは『田園の憂鬱』や『秋刀魚の歌』で有名な佐藤春夫氏だろう――は、周りを見る。
「海野さんのおかげで、後の三人もスムーズに連れてこられるだろう」
 館長は少し苦笑いをする。刀を持った彼女――海野さんは首をかしげた。猫が「お前がしたことは、普通は出来ニャい」と告げる。
「本来なら文豪や我が輩を通して文豪を『こちら』に連れてくる必要がある」
「・・・・・・猫又?」
「・・・・・・猫がしゃべった?」
 海野さんと佐藤先生が猫を見る。二人だけでなく、按司くんともうひとりの女性も猫に釘付けだ。まぁ、僕も棋院くんも最初はそうだった。猫が喋るのだから、仕方ないのだろう。菜乃花が自慢げに口を開く。
「タマはね、おはなしできるんだよ! ねー?」
「だから我が輩には名前はニャいと何度も・・・・・・」
「子供のすることだ、許してやってくれ」
 館長が苦笑いして猫に告げる。猫は人間のようにため息をつくと話を元に戻した。

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