十五



 手を引く役目は佐藤先生になった。何人か連れていこうかとしたが、青年曰く一人の方が良いとのことである。複数人でいっても誰か一人が振り返っちまえばおわりだからな、とのことだ。たしかに、複数人だと大変だろう。まぁ、扉を開ける為の人員もいるから仕方ないのかもしれないけれど。もう一度伸ばされた巻物にはまた文章が増えていた。挿絵を見れば、あの陸奥守と呼ばれていた青年が彼女をあやしているのがわかる。
「でも、これ、潜書したら随分と昔からにならないかい?」
「ソレは大丈夫だ」
 海野さんの部屋の隅に何かを張った青年が息を吐く。文豪と特務司書、館長や猫なんかも海野さんの司書室にくるようにいわれ――僕らが全員そろったのを見て青年はいそいそと札やらなんやらを張り出したのだ。海野さんの司書室がまだ物が少なくてよかったと心底から大もう。
「もうじき陸奥守の誘導でアイツが祝詞を唱え出す。その瞬間に潜れ」
 青年はそう言って刀を抜刀した。
「――歌仙兼定」
「ああ、わかっているよ、主」
 ふわりと現れたのは紫色の髪をした青年である。海野さんが呼び出したような。少し話をしておきたかったのだけど、と残念そうに告げた彼は扉の外を見た。
「――何かあるの?」
「君たちが心配することではないさ」
「あんたらはそっちに集中しとけ」
 そう釘を刺して青年は扉を閉める。その瞬間、落雷のような音、そして閉まる扉の隙間からあの化け物が来たのが見えた。おい! と声を荒げたのは按司くんである。扉を開けようと揺するが、ガチャガチャと鳴るだけでソレは開かない。しかし、ソレと同時に棋院くんが声を上げた。
「佐藤先生! いきますよ!」
「――ああ、!」
 佐藤先生の体が淡く青く光る。そして、吸い込まれるようにしてその巻物に消えた。眉間に皺を寄せて巻物を見下ろしていた館長が、ほっとしたような安堵したような声を出す。
「無事に向こうにたどり着いたようだ」
 そのことばにのぞき込めば、流暢な言葉の隣の挿絵に確かに佐藤先生がいた。

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